すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">クルマの話を《5》 プリンス・グロリア</span>

クルマの話を 《5》 プリンス・グロリア(2代目)

既掲載は
《4》 スバル360
《3》 いすゞ117クーペ
《2》 日野・コンテッサ1600
《1》 マツダコスモスポーツ

クルマの話を《5》 プリンス・グロリア(2代目)
/堂々の風格、3ナンバーを凌ぐ
/寺院建築「軒反りの美」の効果

  ●5ナンバーサイズの車なのに、3ナンバーに勝るとも劣らない堂々の風格が漂い、背景の金沢城郭の櫓が似合っています。旧プリンス自動車(のち日産に吸収合併)が

東京オリンピックを挟んで、1962年から1967年まで製造販売したグロリアの2代目モデル。

    風格は、前端から後端まで魚の側線のよ
うに走る銀色のモール部分が、微妙に、印象的にわずかに反り返っているからでしょうな。ホント古寺、古刹、本山、本堂の大屋根を思わせる雰囲気があります。復唱、プリンス・グロリア。

  ●軒反りには、屋根の腐食をいくらかでも防ぐ効果があるそう。屋根をスーッと滑り落ちてきた雨が、軒の反り返り部分に達してツンと跳ね上げられ、軒先からポーンとはじき飛ばされる。擬音で言うなら、スーッ、ツー、ポーン、ピッチャン…。
数学的な証明はさておき、雨滴が屋根の上に在る時間を最短にする仕掛けが、軒反り(のきぞり)なのだとか。

古代の一大発見、縄のたるみ

●では、「軒反り」の曲線はどうすれば得られるのか。ネットサーフィンの結果では、縄の両端を持ってたるませるのだという。たるませ加減により緩急自在な軒反り曲線、ひいては軒反り建築が可能になるという。古代建築のすごい一大発見ではないか。

つまり、寺院建築の荘厳、崇高さは一本の縄から派生していることになる。大げさに言えば、衆生を救う仏法の場の美も、一本の縄由来の発見、知恵のおかげなんですな。

  写真集『古寺巡礼』や『室生寺』などを残した写真家土門拳は、縄たるみ曲線に果てなく魅入られた人と言えそうです。何しろ降雪の五重塔を、軒反り屋根を撮影するため、室生寺最寄りの旅館に投宿し来る日も来る日もひたすら雪を待ったそうだから。写真集を思い出した私は4年前、法隆寺室生寺長谷寺と巡り、縄たるみ曲線のもたらした天平の甍の偉大さを
再認識してきましたな。グロリアのデザインについては、“アメ車” の影響とする見方もあるようですが、軒反りの成果と見えてしようがないのです。 

 
  ●日産との吸収合併をへて、プリンス・グロリアはニッサン・グロリアとなり、日産の枠内では同クラスのセドリックと競合するため、車名グロリア(栄光)は消えました。

  ただし、グロリアに触発されたかどうか、その後、トヨタからはセンチュリー(世紀)、ニッサンからはプレジデント(大統領)など、メーカー渾身の豪勢、高級な3ナンバー車が登場してくる。
5ナンバーと3ナンバーの分かれ目は、排気量2000㏄▽車高2.0㍍▽車長4.7㍍▽車幅1

.7㍍。グロリアは4項目のうち一つも超えることなく、5ナンバーのままでプリンス自動車を代表したといえますな。デザインの力でしょう。

プリスカ、そしてハコスカ

●付け加えるなら、プリンス・スカイライン(写真)略してプリ
スカ。直線を基調にきちんとした端然たるデザイン。こちらは、今風に言うならプリンスの遺伝子を残すべく、吸収合併後も車名は受け継がれ、一貫してニッサンスカイラインとして健在である。目印は丸いテールランプ。学生時代、知人に略称「ハコスカ」(4ドアのスカイライン)のハンドルを握らせてもらった事があります。

(写真上のグロリア、写真下のスカイラインとも、2014年10月、金沢城公園のクラシックカーフェスタで撮影)

きょうは、これにて。