すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">焼酎ネーミングシリーズ《39》悪太郎、悪、極王道</span>

焼酎ネーミングシリーズ《39》

わが子同様に慈しみ、蝶よ花よと育てたはずなのに
ちょっと身を引きません? ちょっと構えてしまいません?
……ちょっと怖め、ちょっと強あたり、
でもやがて、純真無垢なんだから、一途なんだからと気づいてもらえる……
そんなネーミングかな?

悪太郎(鹿児島、相良酒造、芋)
◆悪(鏡文字で)AQ(宮崎県、王手門酒造、麦)
◆極王道(熊本、恒松酒造、芋)
………………………………

〇悪から善へ、狂言の教え
 丹精した焼酎を世に送り出すのにその名、悪太郎ですか。およそ世間からつまはじきされそうな、およそ芳しくない名ですな。「悪魔」君よりはましかもしれま

せんが。
 想起するのは、狂言の主人公「悪太郎。大酒くらいの暴れ者悪太郎が、眠っている隙に伯父に頭を丸められ、名を「南無阿弥陀仏」とされた。南無阿弥陀仏といえば六字名号、名号といえば絵像、仏像と同様にご本尊そのものを指す。善男善女が自分の名を呼んでは(名号を唱えては)手を合わせ頭を垂れ
て行く。名号の意味が分かるにつれ……、「元」悪太郎は、過去の悪行を悔い仏道修行に入ってゆく、というストーリー。
 短いこの物語から、人というものは、悪の極みからでも善の極みへ、180度変転できるのだ、変身できるのだということが読みとれますな。何か、分かりやすい悪人正機説みたいだな。
 と同時に、名付けには人の方向性を左右する秘められた力というか、マジカルなネーミングパワーがあることを教えてくれていると、こう感得できますな。 悪ガキ、悪童も「大人」になれば……。

 悪談義をもう一つ。
 立山連峰奇観「悪城の壁」をご存知か。称名滝に向かう途中、視界に入ってくるのだが、見上げると、天上界の存在が一枚岩の断崖絶壁をスプーンの腹で次
々こそぎ取っていくような……。浅間山溶岩流の奇観「鬼押出し」と同じように、人知をはるかに超えた天変地異の造形を、人は時に「悪」、時に「鬼」ととらえたと思えるんですな。
 「悪」は決して「ワルい」 だけの意味ではなく、とんでもない埒外の事象、とんでもないスケールの事象もまた意味したと、こう思えます。

…………………………
〇するめあたりめのノリで読む


 鏡文字の「悪」、こちらはもっと端的だ。
するめをあたりめ、あしをよし閉会をおひらきと言うが如
しのノリで読むといい。悪の逆は「良」でしょうから、悪の鏡文字は「良」であると。このラベルはそう言ってます。
 下に添えられたAQは、アクアラングのアク、トヨタのベストセラーカー・アクア、シャープの家電ブランド・アクオスのアク。水のこと。即ち、ラベル全体では、良い水を使った焼酎ですよとアピ
ールしている。謎解き、判じ物の世界ですな。
 それにしても、亜は左右対称だからいいとしても、心を左右逆に書くのは、なかなか手強いこと。幼児期の子は鏡文字などさもあたり前の如くに、難なく書いてくれる(!)のに。わが子のノートに、との字やほの字、んの字が鏡文字で続々出てくると、
ホント、とほほ…、んん? となりますな。 お宅もそうでしたか。なに、成長の、焼酎でいうなら成熟の過程の一現象だそうです。
 左に発して右に現れ、右に発して左に現る……脳神経システムの絶妙、、。。
………………………………

〇極王道 
♫どこが違う ♫順番が違う

「ごく」+「おう」+「どう」。

ええっと

一瞬息を呑んでしまいますな。まさか。よりによって極道の王とはこれいかに

 
違うんですな。ラベルをよく見てください。(♫どこが違う まだ比べてる~山口百恵さんの歌)
 3字の順番が違う。極王道です。
小さくルビが振ってある。「きわみ・おう・どう」と。 東映映画「極道の妻たち」を連想しなくてもよかったのだ。ほんに、極道、酒の世界に進出、でなくてよかった、よかった。

 どうせなら、漢字3文字を無言のうちに並べるのでなく、せめて漢字の間に送りがな「み」をきちんとはさんでほしかったな。
 さすれば、誤読し息を呑むこともなかったのに。おそらく、酒の注ぎ忘れもなかったろうに。

 焼酎づく
りの王道を極めるという意味なんでしょうが、あの道、この道、その道、どの道によらず、求道というもの険しいもの。箱根の山は天下の険、剣岳カニの横ばい、縦ばい。きっと縦バイの方がきついぞ、と。

 道草はここまでにして、それにしても「道を極める」という崇高な言葉の意味が、いったいいつ頃から、なにがどうして昨今のゴクドウの意味に変わっていったのか。
 辞書をい
ろいろ調べると、極道者とは「仏の道を、仏法を極めた者」を指したという。尊敬の念を込めて「道を極めし者」と言ったようなんですな。
 にもかかわらず、道は道でも道楽の道、放蕩の道にだんだんシフトし、堅気から遠く正反対の「極道」というイナス方向の尊称となったようなんですな。
 いつごろ
ら? 
 おそらく天然の「湊」が、近代的な「港」に変わったころから。港湾荷受けが大量雇用を生む一大事業となったころからでしょうな、任侠映画、ヤクザ映画から学んだところでは。
 
誤読回避の送りがな「み」が付いただけで、全く天地のほどの差が意味合いに出てくるんですな。くどいけれども「ごくおうどう」でなくて、「きわみおうどう」。王中の王のことですな。スポーツ界ならやはり大鵬キング・カズでしょうか。 もちろん、王さんも。

きょうは、これにて。
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<span itemprop="headline">焼酎ネーミングシリーズ《38》</span>

どうにも熱い焼酎ネーミング《38》
(前《37》の明治、昭和を受けて)

四万十大正(高知、無手無冠、栗)

川と年号、異質の組み合わせ
自治体の沿革を語る
栗の木の大恩を思う

● 前回《38》の折、「明治の正中」と「昭和仕込」の間に大正がなくちと寂しい思いがして、「大正やーい」とばかり探してみたらやっと見つかりました。ただし、川の名前付きで「四万十大正」。特段示し合わせずとも、近現代の3つの年号を冠した焼酎がそろうとは。まさに阿吽の呼吸であり、娑婆はうまくできてますな。

● 四万十大正。以前取り上げた「ダバダ火振」と同じく、栗を原料にした本格焼酎(乙類)で、無手無冠という蔵元の作。
 なぜに四万十大正という、川と年号のくっついたネーミングが誕生したのか。どうも、高知県高岡郡の行政地名からのようなんですな。
● 大正3年(1914)に「大正村」と改称して新規スタートした村があり、これが戦後まもなく「大正町」に移行、さらに平成大合併で2町1村が一つになって「四万十町」が発足した。大正は字として残った。焼酎「四万十大正」は自治体の名前の沿革を語っている稀少な銘柄なんである。ちなみに隣の四万十市には中村四万十町があるとか。流域が長大にして広大になると、流域の地名も輻輳して紛らわしくややこしくなる。げに地名のネーミングは難しい。

● ネーミングが稀少なら、原料=栗の焼酎も稀少である。さぞかし縄文の香りがするんでしょうな。能登半島縄文真脇遺跡からは、直径九〇センチ級の巨柱を配したウッドサークル(環状列木)が出土している。さながら式年遷宮のごとく、何度も建て替えた何かしら祭祀の痕跡がうかがえているのである。また、木質堅固な栗は近代に入り鉄道線路の枕木として利用され、国有鉄道網が形成された。要は、はるか昔の縄文集落の繁栄も、近代日本の繁栄も栗という樹種が支えてくれたのである。栗の大恩に思い馳せるべし、ではなかろうか。
 航空写真で見る「人の手の入らない川」のうねるような川筋も、悠久の昔からそんなに変わらないに違いない。原生林ならぬ原生の川という言葉さえ浮かんでくる。

 「明治の正中」の芋、
 「昭和仕込」の麦、
 「四万十大正」の栗、
 三代三様の歴史の残り香を味わいたい。

きょうは、これにて。
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<span itemprop="headline">焼酎ネーミングシリーズ《37》明治、昭和</span>

焼酎ネーミングシリーズ《37》
過ぎし時代の製法を復活、再現

◆明治の正中(鹿児島、薩摩酒造、芋)
◆昭和仕込(長崎、壱岐の華、麦)


 「降
る雪や明治は遠くなりにけり」
 中村草田男、昭和6年の句作。平成28年の今なら「降る雪や明治遙かに去りにけり」でしょうな。降る雪も地球暖かく少なめに。年号4つ移ろい、百数十年も経つと地球環境も変わるんですな。

▲明治の正中。初めてこのラベルを見たとき「まさなか」と読みました。いけ
ませんな。連載のタイトルが「どうにも熱い 焼酎ネーミング」であることを考えると、おのずから「しょうちゅう」と読むべきでありました。迂闊でした。
 
 でも、しょうちゅうだと何か当たり前すぎて面白くありませんな、平々凡々。インパクトもサプライズも、遊び心も戯れ唄気分もありません。奇想天外、奇妙奇天烈も。
 さてこの正中、なんでも明治の記録をもとに「どんぶり仕込み」という手法を復活させ、現代に再現したのだとか。庶民的でいいね、どんぶり仕込み。能登半島・七尾には茶碗でかたどる丸っこい「ちゃわん豆腐」があり、金沢市内のスーパーにも流通している。ならば、「ちゃわん豆腐」で「どんぶり仕込み」を一杯やっか?

「まさなか」と読みたい
◆や
はり、「しょうちゅう」より「まさなか」がいいですな。
 理由1。MA・SA・NA・KAと口を大きく開けるあ列の音が4つ続き、めりはりの効いた発音で商品の記銘力に優れる。あごは少々疲れるけれど。
 理由2.「まさなか」と聞くと、天下の妖刀、正宗(まさむね)。冷たく冴えわたる刀身のまだらな刃紋を連想しますな。

「熱に中る」、疾患名は「中熱症」
◆余談ついでに言うと、熱中症は何か変ですな。「中る」という動詞をお忘れか。返り点をお忘れか。毒にあたる中毒症状、熱にあたるは中熱症状でしょう。敵陣小舟の上の揺れる扇を
射抜いたのは平家物語那須与一。的中、必中、命中でした。
 厚生省認定の疾患名に疑問、異議を呈しつつ、以上、中々に奥が深うございました。


▼昭和仕込(長崎、壱岐の華酒造、麦)

●こちらは、昭和の昔造りで仕込んだ焼酎を、平成の世においしく
たしなむ趣向。どうせなら、酒を寝かせる時間は長い方がいい。
 だいたい、賞味期限があるのは日本酒など醸造酒に多くあり、新酒のうちに飲まないと味も香りも落ちていく。その点、蒸留酒は寝かせに寝かせ、熟成させればさせるほどとろり、まったりする。那由多だの、千年の眠りだの、長期熟成を印象づけるネーミングにこと欠かないのである。


子の成人、20年もの古酒で味わう
● 泡盛(沖縄産の焼酎)の場合、父親たる者、子が産まれたらすぐに懇意の蔵元に記念の仕込みを依頼する。長じて子が二十歳となったとき封をあけ、成人祝いの喜びの酒を、親子が酌み交わすのだそうだ。父にとっては至福の酒であろう
。二十年ものの古酒(クースー)という、素敵な泡盛の飲み方をかつて沖縄のスナックで教わった。

 長崎に戻って、さて「昭和仕込」。麦焼酎発祥の地・壱岐の蔵元、その名も壱岐の華株式会社が
壱岐産のたばる麦を原料に、壱岐の島の“風土酒”たらんと情熱を傾けたそう。
 言わずもがな、壱岐は、古代中国の歴史書、三国志の「魏志倭人伝」に「一支国」と記されて登場する。壱は一の旧字であり、支の意味は道の二つに分かれるところ、分岐点の岐、岐阜の岐である。いつの頃か「一支」が「壱岐」と表記されるようになったと想像できないでもない。
 してみると、産地も、蔵元の社名も、商標もまさに壱岐尽しのこの焼酎、小さな島なれど遥か昔の、遥か大陸の古代文献に登場する、ちょっと歴史の香りを秘めた焼酎なんである。
 誇らしく、壱岐尽しになるのも、むべなるかな。

きょうは、これにて。
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<span itemprop="headline">焼酎ネーミングシリーズ《36》</span>

焼酎ネーミングシリーズ≪36≫
天誅」と「帥」

〇出すぎたら、もぐらたたき
 やじろうべいなら右に傾こうが左に傾こうが、いっかな気にはなりません‥‥。しかし、これがシャバの雰囲気、世情となると話は別で、歴史の 帰趨を鑑みても、傾きすぎはよろしくありません。最近、ニュースで右翼だの右傾

化、右翼政治家などと目にし耳にもするが、どうにも慣れてきているようで…近隣国の情勢が情勢だけにとは言いながら、どうもよろしくありませんな。
 なべて傾き過ぎには敏感でありたい。右と左のバランス取りは、モグラ叩きの要領で、右が出たら右を、左が出たら左を叩かにゃ。

天誅(鹿児島、白玉醸造、米・芋)
 なぜ、かようなおっかない尖ったネーミングになったんだろうと首傾げつつ‥‥
 ♪♪星は何でも知っている~という歌が昔大ヒットした。♪♪夕べあの娘(こ)が泣いたのも~。今なら流行語大賞でしょうな、きっと。
 天体つながりで、お天道さまについて。
誰が見て
いなくてもお天道さまが見ているぞ。すべてお見通しだ。天知る・地知る・我知る(そして星知る!)で、必ず天罰が下る。だから悪いこと、恥なことするんじゃないぞ。昔の親は偉かった。家庭教育の、躾のイロハですな、今も。

 そして本題の「天誅」について。
 幕末にその名もずばり天誅組という、あだ花のような尊皇攘夷の武断組織があった。昭和の2・26事件では、将校たちは「天誅!」と 叫んで要人暗殺に走った。
 共通するのは、自分たちの主張する「正義」を問答無用とばかりに武力で実現しようとした点。「
天誅!」と声を発すれば、主張するところは正義となって行動は免罪されるーー、 そんな魔力がこの言葉「天誅」にあったのかも知れません。やはりおっかない言葉です。

 《《ここでなぜか、シンガーソングライター中島みゆきの歌「ノーバディ・イズ・ライト」を思い出す。誰も正しくない、100%正しい人なんていない。イデオロギー対立が果てない人間社会の真理を衝いています。》》
 例えば、「平和安全保障法制」が「戦争法案」だと指摘される怪、憲法違反と指摘される法案が閣議決定される怪。まさしくノーバディ・イズ・ ライトですな。
 ネーミングの素案は、天与の焼酎、天恵の焼酎を意味する「天酎」という造語だったと
か。もし「天酎」なら、こころ平穏にニコニコ顔で飲めたのに、残念。



▶帥(そつ)(鹿児島、さつま無双、芋)
●ん?の第1弾。
 師かと思ったら帥ではありませんか。横棒が1本載っかっているかいないかだけだが、大層な違いです。似過ぎ。
 お笑い芸人、ゴルゴ松本さんのベストセラー「命の授業」風に字面を解釈するとー。
ーー何の
道であれ、あらまほしきは師。師なくてはフラフラ迷路を行くがごとし。横棒1本は実はフラフラ抑止の綴じ蓋なんですな、ホント。師の役割をこの横棒が暗示しているのです。

●ん?の第2弾
 対して帥の字。元帥(げんすい)などの熟語でおなじみ。先
の大戦では、天皇の大権の一つだった陸海軍の統帥権(とうすいけん)を軍上層部が 勝手に侵犯、やがて暴走し悲惨な歴史の結末へとつながった。この字に軍関連用語のイメージがあって、いまわしい過去の記憶が連なっているから、どうしてもこの字、使用をためらいがち。
 
●しかし、救われました。
ラベルをよ~く見ると、「そつ」とルビが振ってある。
ネット検索で、「そつ=帥」を調べると、古代律令制下の太宰府〝長官〟とある。要するに九州方面の防人たちの、そのトップ、ボスが帥(そつ)。「すい」と「そつ」とで大違い。今回、初めて知りました。
 
 
●ん?第3弾
 鹿児島では、居酒屋で「おいのそつ」と頼むと、キープしてある俺の焼酎が出てくるとか。鹿児島弁でそつとは焼酎のことなんですな。ショーチューから、ショチュへ、さらに
ソツに。こう転訛したと容易に想像できる。
 帥の字を、「す
い」ではなく、太宰府長官の「そつ」と読ませる。ネーミングの眼目は、蔵元の狙いは、言わずもがな焼酎圏域のトップの座をアピールしたいということでしょう。太宰府を引っ張り出してくるなんて、九州のこだわりが透けて見えます。

 天誅といい、帥といい、最初どっきり、最後な~んだ了解という、ネーミング考現学でしたな。

きょうは、これにて。
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<span itemprop="headline">焼酎ネーミングシリーズ《35》加賀野菜焼酎オンパレード</span>

(8月末日に訪問者6000人超え。感謝申し上げます)
焼酎ネーミングシリーズ《35》
加賀野菜焼酎のオンパレード


◆かぼちゃ
◆たけのこ
◆れんこん
◆だいこん
(JA金沢市、販売元・伸栄館)
五郎島金時
(JA金沢市、蔵元・神酒造=鹿児島)

 焼酎はある意味、すごい酒ですな。日本酒なら原料は米のみという世界で業界は鋭くしのぎを削っていますが、焼酎は原材料なんでもござれ、来るもの拒まずなんですな。いわば裾野の広い単独峰。

 こちらに芋焼酎あれば、あちらに麦焼酎あり、そちらに米焼酎なら、もひとつあちらにそば焼酎、そのまたあちらには黒糖焼酎も、かてて加えて、かの地沖縄には泡盛(原料

タイ米)もありますな。栗焼酎に胡麻焼酎、紫蘇焼酎、昆布焼酎、すだち焼酎、抹茶焼酎と、甲類乙類混和も次々、etc…。
 穀物、果実次第で、まるでマジカルミステリーツアーへの誘いですな。蒸留酒の強みですな。


◆◆そこで今回は、個性派も個性派、地域限定の「加賀野菜」シリーズのオンパレード。パッケージからしてこの一団は、人を呑んでかかってますな、ひらがな一字ずつで済ませるとは。では、ドレミのうた風にいきましょ。

▼だいこん焼酎
「だ」は源助大根のダ~
味のある名前ですな。この品種の産みの親か育ての親か、丹精したお百姓さんの顔が浮かんできそう。煮崩れしにくく金沢おでんにもってこいだから、ひょっとして、「面取り」した大根のように、丸っこく角のとれた好々爺だったかも。金沢おでんのもう一方の主役ですから。

 ▼かぼちゃ焼酎
「か」は打木赤皮甘栗かぼちゃのカ~
名前に産地、外見、風味を盛り込んじゃったから、長いな。落語の「寿限無寿限無五劫のすり切れ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末‥…(略)…‥ぱいぽぱいぽの長久命の長助」と同じで、覚えるのに難儀しそう。
スムーズにフルネームが出てくればお見事と言おう。

▼れんこん焼酎
「れ」は加賀れんこんのレ~。
旧小坂村の産物だから、小さくこじんまりと小坂レンコンと呼ばれてきまし

たが、行政が「加賀野菜」のアピールを始めた頃からか、あるいは販路拡大に伴ってか、加賀レンコンと呼称されるようになってきたように思えます。世に出るとともに呼称が変わるとは、出世魚、鰤(ぶり)みたいですな。

▼たけのこ焼酎
「た」は、たけのこのター
そうか、たけのこまで焼酎になったか。たけのこのた~が飛んで飛んで飛んでタケコプタのタ~になったとさ、、?
 産地の別所地区には、たけのこ料理専門店が数軒あって、刺身、てんぷら、あえ物、煮物、みそ汁‥までフルコースが味わえます。膳には、たけのこ焼酎も加わります。

▼▼次は、写真につられて、ひらがな4字組み合わせの脳トレ。連想のまにまに。

【かたれだ】<語れ><騙れ><勝たれ> だ!
おーい誰でもいいから、何でもいいから、座を盛りあげるために語れ。自己宣伝でもいいぞ。ただし、「消防署の方から来ました」なんて騙るのはだめだぞ。富山のJ1チーム名は「勝たーれ」だったな。やんわり自発を促す〝はんなり言葉〟だな。根性一辺倒では人は動かず成果も出ないもんな。
【かれただ】<枯れた><涸れた><嗄れた>だ!
フォーククルセダーズの希代の迷曲もとい名曲、「帰ってきたヨッパライ」を思い出すなぁ。おらは死んじまっただぁ、天国に行っただ‥‥(略)‥‥。→→おらは枯れちゃっただぁ、枯れちまっただぁ、気軽にひょいひょい、天国よいとこケセラセラ~~。声が嗄れちゃっただぁ?喉頭がんかもしれませんぞ。早く病院に行きましょ。天変でダムの水も涸れやすくなりました。
【たかれだ】<たかれ> だ!
ついこの間、私的流用が得意な知事がいて、ハエの姿を連想したものです。為政者たる者、税金にたかってはいけません。顔は履歴書。いずれ、色に出にけりわが品格‥‥となります。
【たれかだ】 出でよ、たれかあるか。誰そ彼は! 昏れ時にはまだ早い。
【ただれか】 政権も長くなるとただれが出てきます。膿も出ればただれてもくる。耐用年数は何ごとにもあるぞ。
【だかれた】飲み会が終わり一人が、きょうは俺が「だいてやる」と。富山弁で「出してやる」の意であって、抱いてやるではありません。「出いてやる」ですから、誤解無きよう!!! 「ひ」が「し」になる東京弁、時に「し」が「い」になる富山弁。

とりはやはり芋で

▼【五郎島金時】焼酎。
金沢市五郎島地区を中心に砂丘地で栽培されるサツマイモ。栽培の歴史は薩摩より種イモが持ち帰られて以来、軽く300年は超えるそうで、したがって焼酎化は、本家鹿児島の蔵元に依頼したのだとか。いわば、五郎島金時のルーツを物語る一本だけにボトルの装いも、芋の皮の色に合わせて赤紫を基調にするなど、推察するところ、かなり手が込んでますな。きっと、まさかり担いだ金太郎も、いや金太郎キャラクターのもととなった坂田公時も、さぞかし満足でしょう。薩摩産と加賀産を飲み比べてみるのも一興かも。
 
 
金時つながりで次の焼酎化は、金時草でどうでしょう。葉の表は緑、裏は金時芋を思わせる赤紫。ちなみに「きんじそう」と読みます。きんときそうではありませんから、誤解無きよう。
 居酒屋でのゴールデンタイムは、金時草のおひたしをアテにいかが。

きょうは、これにて。
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呑んべに、金時草
   
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<span itemprop="headline">焼酎ネーミングシリーズ《34》胡坐、坐忘</span>

焼酎ネーミングシリーズ《34》
今回は「胡坐」と「坐忘」。座ではなくて、旧字の坐の付く銘柄2つについて。
胡坐という漢字2字のどこがどうなったら「あぐら」と読めるのか、とんと見当がつきません。もともとは「あ・くら」(足と坐)だったとか、厳密には「あぐら・ざ」だったとの説もあるようですが、どうなんでしょうか。
坐忘なんて、よほどのことがないかぎり行き当たらない仏教、禅宗系の言葉ですね。たまに飲食店の名に好んで使われることもあるようですが‥。


◆胡坐(あぐら)
(福岡、池亀酒造、麦)

● その昔「アングラ」という言葉が流行りましたな。
新宿の夜、ビル地下1階の店への降り口、「地下劇場 アートシアター」と看板が

立てかけられていた。学生には入りづらいまがまがしさがあり、これがアンダーグラウンド、略してアングラとの初遭遇――。

● 「アグラ」と聞くと、「何っ、アングラ?」と反応するんですな。「かなりやばい、危なっかしい、きわどい、スレスレの‥‥」あのアングラかと。

新宿
周辺には天井桟敷や赤テント、黒テント早稲田には早稲田小劇場などなど、若者の前衛劇団が社会に、既成演劇に挑むように次々と誕生した。寺山修司の放ったフレーズ「書を捨てよ、街に出よう」は何やら焚書坑儒みたいで衝撃的だったし、浅川マキの歌うけだるく退廃的なしかし希望も見える「夜が明けたら」「かもめ」などはまさに時代を風靡。彼女は石川県石川郡美川町(現白山市)の出身ですから、お忘れなく。アングラの牽引者たちはやがてみな、地上へとせり上がりを果たしましたとさ‥‥昔話。

っ本題は「胡坐」だぁ?、ならばすぐ場面転換。

「胡坐」の漢字2字、どこがどうなれば、あぐらと読めるのか不可解至極。普通ならコザと素直に音読みしますな。

何っ、コザ? 
沖縄のコザ高校が甲子園に出場してきたとき、コザ市というカタカナ自治体名にびっくりしました。カタカナだとその地名が生まれた由縁、由緒なんて想像もつかない。その後、
沖縄市に改名したが、今度はうかつにも県庁所在地と誤認してしまう。何しろ沖縄県沖縄市だから、ついつい県を代表する市と早とちりするんですな。山梨県山梨市と同様で、あぁ、ややこしい。

沖縄市の「嘉手納基地の見える丘」で、胸が締め付けられるような光景を目にした。デートにやって来た、まだ二十歳前くらいの茶髪の男女、一面のコンクリートの基地、数多の大型ヘリ、戦闘機を一望して黙りこくってしまった。故郷の街のど真ん中を占める〝超重たい現実〟に打ちのめされてしまったのです。沖縄の子がオキナワの子に変わる一瞬みたいな。あれから二十余年、二人はそれぞれに、現実をどう消化し、どう向き合ってきたのか、向き合っているのか。尋ねてみたい気もする。ちなみにネットを見る限り、丘の名称は、より政治的メッセ
ージ性の強い、安保の見える丘公園に改名したようです。

さらに本題に戻ろう。
中国では胡は異民族のこと。島国日本で指す征夷、攘夷の夷(えびす)、外敵に相当するのかな。異民族の座り方だった「胡座」が巡り巡って日本に入ってきたようです。戦国時代の武士はテレビ時代劇を見ていると、胡坐からそのまますっくと立ち上がる。現代人は、床に手をつき、ようよう、ヨッコラショとばかりに立ち上がる。放っておくと現代人はいつまでも楽に〝あぐらをかいている≫癖があるようですな。せめて、気持ちだけでも常に正座で―、気持ちだけでもいつでも立ち上がれるよう蹲い(つくばい)の姿勢を、蹲踞(そんきょ)の姿勢を心掛けましょう―。


●坐忘(ざぼう)
(鹿児島、さつま無双、芋)

「坐忘」、坐して忘るる。字面に意識を集中させると、徐々に雑事を忘れ、心頭滅却の心地に近づいていくような‥‥。焼酎のネーミングになぜに、仏教哲学さもあらんとの、高邁な言葉を使ったのでしょうか。

ざぼう。ザボウ。ルビは、ひらがなでもカタカナでもいけそうですな。
勧進帳」に武蔵坊弁慶がいれば、北島三郎の歌う「加賀の女」には♪君と出会った香林坊~(おっと、これは金沢の地名)と出てきたし、立山芦峅寺の教算坊とくれば地獄極楽山岳信仰を支えた宿坊の名前の1つ。
和英チャンポンで、
「The坊」となれば、至高の僧侶、地名、寺坊を指すのではありますまいか??。

ついでに、BOSEという米国の音響メーカーがあります。この社名に同じように定冠詞THEを付ければ、「ザ・ボウズ」。一段といい音が出そうですな。これを無理矢理、漢字アルファベットで書いて「坐忘‘s」。所有形ながら「美音追求」にかける音響メーカーの社是であるとの雰囲気が出てきませんか。しかし、メーカーはさすがに怒るだろうな、〝座して忘れてはくれない〟だろうな‥‥。

真面目に本題に戻る。『坐忘』の意味について考察。
曹洞宗の開祖、道元禅師の残した言葉『只管打坐』(しかんたざ)と『身心脱落』『坐忘』三者をコラボさせれば、仏心浅き者でも理解しやすいのでは。
つまり、ただただひたすら坐禅し、身心のこと意識から抜け去って、そうしてすべてを忘れ、眼前の現(うつつ)を超越する、即ち悟りを得る――。

只管打坐だのと言われてもな~という向きには、だるまさんが目の前にちらついてきませんか? インドから中国に禅を伝えた達磨大師は、面壁九年、とうとう手も足もとけ失せて、ようやく悟りの境地を得たという、伝説の高僧中の高僧ですな。じっと瞑目どころか、逆にかっと眼を見開いていなさる―。だるまさんに親しみをこめつつ、坐忘の心境を教わりたいですな。

それにしても、旧字の「坐」は屋根も軒も庇もないアウトドアの、原初的な樹下坐禅を連想します。一方の「座」は、屋根も軒も庇もあるインドアの、堂内座禅を連想します。部首「まだれ」の有無ひとつで、禅修行の風景が全然違って見えてきますな。焼酎「坐忘」は、姿勢を正してゆるり味わいましょう。

(坐忘は、特約店の独自ブランドらしく、金沢圏の酒類量販店、専門店にボトル現物なく、写真掲載は見送りました)

きょうは、これにて。
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<span itemprop="headline">焼酎ネーミングシリーズ《33》がまだす、球磨焼酎</span>

焼酎ネーミングシリーズ《33》
〇がまだす 〇球磨焼酎



▼がまだす(大分、老松酒造、麦)
 
九州北部の方言「頑張る」の意
● S
NSで地震のタイムラインを見ていたら、くまモンがんばれ絵」というコーナーがあって、たくさんのいろんな励ましの絵がアップされていた。中に1枚、幼な子が書いたと思われる絵が。
耳を書き忘れたのか、ドラえもんのようなまん丸顔、ほほに赤いハートマークをつけ

愛くるしいくまモン。そのそばに「がまだせ 火の国」と、おそらく親の字(?)で書き込みが添えられていた。

4・14の「熊本地震」発生以降、ブログを更新しようという気が失せていた。ニュース報道のたびに
変わる震災の現実をテレビで見、被災、避難された方々のことを思うと、ブログ更新なんぞとんでもなく場違いだと思えた。震源域が隣県に拡大し、遠い彼の地の親戚も避難所で夜を明かしたと判明した。
なお何にもできな
いまま。ただ、上記の幼な子の「がまだせ 火の国」の絵に触発され、急きょ、焼酎ネーミングシリーズに被災地熊本、大分の焼酎を選び、被災地の早期の復旧、復興を願おうと思い至った次第。

● 「がまだす」とは、がんばる、精を出すという意味。幼な子も
「がませ~」と応援する。がまだすは熊本、大分のほか長崎、佐賀、福岡県あたりでも使うらしい。がまだすドームがあれば、がまだす花火大会、がまだすコンサートもあって、いわば、ガマだすは県境をいくつもまたぎ発せられてきた広域方言なのである。

では、せっせと精を出すの精に該当する「がま」とは何か? せつなにストレートに思い出すのは、全く見当違いだろうけれど、
得手勝手に言うなら。がまの油売り。筑波地方の大きなガマガエルが、鏡に映る自分の姿にたらり、たらーりと出す油、塗れば刀の切り傷も治るという、あのガマの油売りのガマ(のことかいな)。
筑波と九州はえらい離れているから
関係ないと思うが‥、しかし、あのバスコダ・ガマはポルトガルから遠くアフリカ大陸を迂回し、南端に喜望峰を発見して、さらに遠方のインド大陸に到達したもんな、ほんと、よくバスコダ・ガマは、「がまだした」と思いますな(この段、ガマつながりの言葉遊びです)。

酎「がまだす」を出したのは大分の麦焼酎メーカーだが、広域方言だけに九州中部、北部で十分通る。銘柄「がまだす」で、被災地への思いを代弁できればと思う。もっと方言で、がまだすばい! まだまだ、がまだすけん


球磨焼酎(熊本、球磨焼酎酒造組合、米)

▶「怨」一字の幟の記憶とともに
▶産地指定の「知的財産権ブランド」

ラベルからはみ出さんばかりに、でかい角張った4文字がエネルギッシュに、球・磨・焼・酎。実は、わが人生が一番最初に味わっ
た香りも匂いも強烈な米の本格焼酎である。

21歳の秋の日の未明、国鉄東海道線岐阜県大垣駅のホーム。急行列車を乗り継いで一行は大阪に向かう途中だった。最終目的地は大阪厚生年金会館
人影薄いホームに座り込んだ20人ほどの青年が、ゴドーを待ちながら、ではなくて、始発列車を待ちな
がら、白地に紺の湯飲みに注がれた寒さしのぎの焼酎を、なめるようにちびちびと‥‥、といえばかっこいいが、実際は、匂いと香りに圧倒され、「これが焼酎か。俺にはちょっと無理な酒かもしれんな」と思ったものである。四十数年前の当時、焼酎はまだ一般的でも、まして国際的でもなく、あくまで九州の個性の強い酒だったのである。

その後わが人生は移ろい、夏でも清酒熱燗派だった青年が、いつ

しか焼酎優勢派に。50代になると、匂い、香りの強い本格焼酎(乙類)の方がうまいと感じる本格焼酎派に。ついでに、酒の好みが変わった挙げ句の60代、ブログでこの焼酎ネーミングシリーズをせっせと(でもないか)書いているとはこれいかに。つくづく酒の銘柄いろいろ、人生いろいろ、飲み方いろいろである。芋、そば、麦、米‥、ロック、ストレート、湯割り、水割り、敏燗、鈍感‥。


熊本という地名は、球磨川(くまがわ)由来かと思ったが、さにあらずで、中世の古文書には「隈本」(くまもと)と出てくるとか。加藤清正が築城の際、隈の字の旁りが「畏れ(おそれ)、畏まる(かしこまる)」が面白くな

かったらしく、号令一下、熊本と変えたそうだ。勇猛果敢の武将は、隈では「武士道に合わぬ」と感じたに違いない。名城のネーミングに、黒一色、熊の威をかぶせてみた? 

今回の、最大震度7を2度も記録した熊本地震で、隈本城の石垣が相当量崩れた。屋根瓦も大量に落ちたが、これは城が倒壊しないよう身軽となるため、瓦が落下するようになっているのだとの意外な説明があり、へぇそうなのかと。水に落ちた犬が身震いを2度3度、一気に水滴を飛ばすが如く瓦を落とすのか、
と合点も。


球磨焼酎(米)は、壱岐焼酎(麦)、薩摩焼酎(芋)、
流況泡盛と、清酒では石川県白山地方の白山菊酒とともに、国税庁により産地指定を認められている。知的財産権(商標)として保護されている。貴重な由緒ある地域ブランドなんですな。球磨焼酎酒造組合には30近い蔵元が名を連ねており、それそれに「白岳」などの銘柄をもっている。
高低入り組んだ地形を指した「隈」は、築城と同時に「熊」となり、今では全国屈指のゆるキャラ、「くまモン」が活躍中なのである。

さて、大垣駅での球磨焼酎の続き。
大阪に着いた日、「怨」の一字を染め抜いた黒い幟(のぼり)や筵旗が水俣病患者家族や一株株主運動の支援者によって高々と掲げられ、ビジネス街御堂筋に翻った。原因企業チッソを糾弾すべくー。球磨焼酎とともに忘れられない記憶である。

きょうは、これにて。
ポパイに、ほうれん草
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