すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">焼酎ネーミングシリーズ《38》</span>

どうにも熱い焼酎ネーミング《38》
(前《37》の明治、昭和を受けて)

四万十大正(高知、無手無冠、栗)

川と年号、異質の組み合わせ
自治体の沿革を語る
栗の木の大恩を思う

● 前回《38》の折、「明治の正中」と「昭和仕込」の間に大正がなくちと寂しい思いがして、「大正やーい」とばかり探してみたらやっと見つかりました。ただし、川の名前付きで「四万十大正」。特段示し合わせずとも、近現代の3つの年号を冠した焼酎がそろうとは。まさに阿吽の呼吸であり、娑婆はうまくできてますな。

● 四万十大正。以前取り上げた「ダバダ火振」と同じく、栗を原料にした本格焼酎(乙類)で、無手無冠という蔵元の作。
 なぜに四万十大正という、川と年号のくっついたネーミングが誕生したのか。どうも、高知県高岡郡の行政地名からのようなんですな。
● 大正3年(1914)に「大正村」と改称して新規スタートした村があり、これが戦後まもなく「大正町」に移行、さらに平成大合併で2町1村が一つになって「四万十町」が発足した。大正は字として残った。焼酎「四万十大正」は自治体の名前の沿革を語っている稀少な銘柄なんである。ちなみに隣の四万十市には中村四万十町があるとか。流域が長大にして広大になると、流域の地名も輻輳して紛らわしくややこしくなる。げに地名のネーミングは難しい。

● ネーミングが稀少なら、原料=栗の焼酎も稀少である。さぞかし縄文の香りがするんでしょうな。能登半島縄文真脇遺跡からは、直径九〇センチ級の巨柱を配したウッドサークル(環状列木)が出土している。さながら式年遷宮のごとく、何度も建て替えた何かしら祭祀の痕跡がうかがえているのである。また、木質堅固な栗は近代に入り鉄道線路の枕木として利用され、国有鉄道網が形成された。要は、はるか昔の縄文集落の繁栄も、近代日本の繁栄も栗という樹種が支えてくれたのである。栗の大恩に思い馳せるべし、ではなかろうか。
 航空写真で見る「人の手の入らない川」のうねるような川筋も、悠久の昔からそんなに変わらないに違いない。原生林ならぬ原生の川という言葉さえ浮かんでくる。

 「明治の正中」の芋、
 「昭和仕込」の麦、
 「四万十大正」の栗、
 三代三様の歴史の残り香を味わいたい。

きょうは、これにて。
  ポパイに、ほうれん草。
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