すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">焼酎ネーミングシリーズ《33》がまだす、球磨焼酎</span>

焼酎ネーミングシリーズ《33》
〇がまだす 〇球磨焼酎



▼がまだす(大分、老松酒造、麦)
 
九州北部の方言「頑張る」の意
● S
NSで地震のタイムラインを見ていたら、くまモンがんばれ絵」というコーナーがあって、たくさんのいろんな励ましの絵がアップされていた。中に1枚、幼な子が書いたと思われる絵が。
耳を書き忘れたのか、ドラえもんのようなまん丸顔、ほほに赤いハートマークをつけ

愛くるしいくまモン。そのそばに「がまだせ 火の国」と、おそらく親の字(?)で書き込みが添えられていた。

4・14の「熊本地震」発生以降、ブログを更新しようという気が失せていた。ニュース報道のたびに
変わる震災の現実をテレビで見、被災、避難された方々のことを思うと、ブログ更新なんぞとんでもなく場違いだと思えた。震源域が隣県に拡大し、遠い彼の地の親戚も避難所で夜を明かしたと判明した。
なお何にもできな
いまま。ただ、上記の幼な子の「がまだせ 火の国」の絵に触発され、急きょ、焼酎ネーミングシリーズに被災地熊本、大分の焼酎を選び、被災地の早期の復旧、復興を願おうと思い至った次第。

● 「がまだす」とは、がんばる、精を出すという意味。幼な子も
「がませ~」と応援する。がまだすは熊本、大分のほか長崎、佐賀、福岡県あたりでも使うらしい。がまだすドームがあれば、がまだす花火大会、がまだすコンサートもあって、いわば、ガマだすは県境をいくつもまたぎ発せられてきた広域方言なのである。

では、せっせと精を出すの精に該当する「がま」とは何か? せつなにストレートに思い出すのは、全く見当違いだろうけれど、
得手勝手に言うなら。がまの油売り。筑波地方の大きなガマガエルが、鏡に映る自分の姿にたらり、たらーりと出す油、塗れば刀の切り傷も治るという、あのガマの油売りのガマ(のことかいな)。
筑波と九州はえらい離れているから
関係ないと思うが‥、しかし、あのバスコダ・ガマはポルトガルから遠くアフリカ大陸を迂回し、南端に喜望峰を発見して、さらに遠方のインド大陸に到達したもんな、ほんと、よくバスコダ・ガマは、「がまだした」と思いますな(この段、ガマつながりの言葉遊びです)。

酎「がまだす」を出したのは大分の麦焼酎メーカーだが、広域方言だけに九州中部、北部で十分通る。銘柄「がまだす」で、被災地への思いを代弁できればと思う。もっと方言で、がまだすばい! まだまだ、がまだすけん


球磨焼酎(熊本、球磨焼酎酒造組合、米)

▶「怨」一字の幟の記憶とともに
▶産地指定の「知的財産権ブランド」

ラベルからはみ出さんばかりに、でかい角張った4文字がエネルギッシュに、球・磨・焼・酎。実は、わが人生が一番最初に味わっ
た香りも匂いも強烈な米の本格焼酎である。

21歳の秋の日の未明、国鉄東海道線岐阜県大垣駅のホーム。急行列車を乗り継いで一行は大阪に向かう途中だった。最終目的地は大阪厚生年金会館
人影薄いホームに座り込んだ20人ほどの青年が、ゴドーを待ちながら、ではなくて、始発列車を待ちな
がら、白地に紺の湯飲みに注がれた寒さしのぎの焼酎を、なめるようにちびちびと‥‥、といえばかっこいいが、実際は、匂いと香りに圧倒され、「これが焼酎か。俺にはちょっと無理な酒かもしれんな」と思ったものである。四十数年前の当時、焼酎はまだ一般的でも、まして国際的でもなく、あくまで九州の個性の強い酒だったのである。

その後わが人生は移ろい、夏でも清酒熱燗派だった青年が、いつ

しか焼酎優勢派に。50代になると、匂い、香りの強い本格焼酎(乙類)の方がうまいと感じる本格焼酎派に。ついでに、酒の好みが変わった挙げ句の60代、ブログでこの焼酎ネーミングシリーズをせっせと(でもないか)書いているとはこれいかに。つくづく酒の銘柄いろいろ、人生いろいろ、飲み方いろいろである。芋、そば、麦、米‥、ロック、ストレート、湯割り、水割り、敏燗、鈍感‥。


熊本という地名は、球磨川(くまがわ)由来かと思ったが、さにあらずで、中世の古文書には「隈本」(くまもと)と出てくるとか。加藤清正が築城の際、隈の字の旁りが「畏れ(おそれ)、畏まる(かしこまる)」が面白くな

かったらしく、号令一下、熊本と変えたそうだ。勇猛果敢の武将は、隈では「武士道に合わぬ」と感じたに違いない。名城のネーミングに、黒一色、熊の威をかぶせてみた? 

今回の、最大震度7を2度も記録した熊本地震で、隈本城の石垣が相当量崩れた。屋根瓦も大量に落ちたが、これは城が倒壊しないよう身軽となるため、瓦が落下するようになっているのだとの意外な説明があり、へぇそうなのかと。水に落ちた犬が身震いを2度3度、一気に水滴を飛ばすが如く瓦を落とすのか、
と合点も。


球磨焼酎(米)は、壱岐焼酎(麦)、薩摩焼酎(芋)、
流況泡盛と、清酒では石川県白山地方の白山菊酒とともに、国税庁により産地指定を認められている。知的財産権(商標)として保護されている。貴重な由緒ある地域ブランドなんですな。球磨焼酎酒造組合には30近い蔵元が名を連ねており、それそれに「白岳」などの銘柄をもっている。
高低入り組んだ地形を指した「隈」は、築城と同時に「熊」となり、今では全国屈指のゆるキャラ、「くまモン」が活躍中なのである。

さて、大垣駅での球磨焼酎の続き。
大阪に着いた日、「怨」の一字を染め抜いた黒い幟(のぼり)や筵旗が水俣病患者家族や一株株主運動の支援者によって高々と掲げられ、ビジネス街御堂筋に翻った。原因企業チッソを糾弾すべくー。球磨焼酎とともに忘れられない記憶である。

きょうは、これにて。
ポパイに、ほうれん草
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