すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">焼酎ネーミングシリーズ《37》明治、昭和</span>

焼酎ネーミングシリーズ《37》
過ぎし時代の製法を復活、再現

◆明治の正中(鹿児島、薩摩酒造、芋)
◆昭和仕込(長崎、壱岐の華、麦)


 「降
る雪や明治は遠くなりにけり」
 中村草田男、昭和6年の句作。平成28年の今なら「降る雪や明治遙かに去りにけり」でしょうな。降る雪も地球暖かく少なめに。年号4つ移ろい、百数十年も経つと地球環境も変わるんですな。

▲明治の正中。初めてこのラベルを見たとき「まさなか」と読みました。いけ
ませんな。連載のタイトルが「どうにも熱い 焼酎ネーミング」であることを考えると、おのずから「しょうちゅう」と読むべきでありました。迂闊でした。
 
 でも、しょうちゅうだと何か当たり前すぎて面白くありませんな、平々凡々。インパクトもサプライズも、遊び心も戯れ唄気分もありません。奇想天外、奇妙奇天烈も。
 さてこの正中、なんでも明治の記録をもとに「どんぶり仕込み」という手法を復活させ、現代に再現したのだとか。庶民的でいいね、どんぶり仕込み。能登半島・七尾には茶碗でかたどる丸っこい「ちゃわん豆腐」があり、金沢市内のスーパーにも流通している。ならば、「ちゃわん豆腐」で「どんぶり仕込み」を一杯やっか?

「まさなか」と読みたい
◆や
はり、「しょうちゅう」より「まさなか」がいいですな。
 理由1。MA・SA・NA・KAと口を大きく開けるあ列の音が4つ続き、めりはりの効いた発音で商品の記銘力に優れる。あごは少々疲れるけれど。
 理由2.「まさなか」と聞くと、天下の妖刀、正宗(まさむね)。冷たく冴えわたる刀身のまだらな刃紋を連想しますな。

「熱に中る」、疾患名は「中熱症」
◆余談ついでに言うと、熱中症は何か変ですな。「中る」という動詞をお忘れか。返り点をお忘れか。毒にあたる中毒症状、熱にあたるは中熱症状でしょう。敵陣小舟の上の揺れる扇を
射抜いたのは平家物語那須与一。的中、必中、命中でした。
 厚生省認定の疾患名に疑問、異議を呈しつつ、以上、中々に奥が深うございました。


▼昭和仕込(長崎、壱岐の華酒造、麦)

●こちらは、昭和の昔造りで仕込んだ焼酎を、平成の世においしく
たしなむ趣向。どうせなら、酒を寝かせる時間は長い方がいい。
 だいたい、賞味期限があるのは日本酒など醸造酒に多くあり、新酒のうちに飲まないと味も香りも落ちていく。その点、蒸留酒は寝かせに寝かせ、熟成させればさせるほどとろり、まったりする。那由多だの、千年の眠りだの、長期熟成を印象づけるネーミングにこと欠かないのである。


子の成人、20年もの古酒で味わう
● 泡盛(沖縄産の焼酎)の場合、父親たる者、子が産まれたらすぐに懇意の蔵元に記念の仕込みを依頼する。長じて子が二十歳となったとき封をあけ、成人祝いの喜びの酒を、親子が酌み交わすのだそうだ。父にとっては至福の酒であろう
。二十年ものの古酒(クースー)という、素敵な泡盛の飲み方をかつて沖縄のスナックで教わった。

 長崎に戻って、さて「昭和仕込」。麦焼酎発祥の地・壱岐の蔵元、その名も壱岐の華株式会社が
壱岐産のたばる麦を原料に、壱岐の島の“風土酒”たらんと情熱を傾けたそう。
 言わずもがな、壱岐は、古代中国の歴史書、三国志の「魏志倭人伝」に「一支国」と記されて登場する。壱は一の旧字であり、支の意味は道の二つに分かれるところ、分岐点の岐、岐阜の岐である。いつの頃か「一支」が「壱岐」と表記されるようになったと想像できないでもない。
 してみると、産地も、蔵元の社名も、商標もまさに壱岐尽しのこの焼酎、小さな島なれど遥か昔の、遥か大陸の古代文献に登場する、ちょっと歴史の香りを秘めた焼酎なんである。
 誇らしく、壱岐尽しになるのも、むべなるかな。

きょうは、これにて。
ポパイに、ほうれん草
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