すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">焼酎ネーミングシリーズ《36》</span>

焼酎ネーミングシリーズ≪36≫
天誅」と「帥」

〇出すぎたら、もぐらたたき
 やじろうべいなら右に傾こうが左に傾こうが、いっかな気にはなりません‥‥。しかし、これがシャバの雰囲気、世情となると話は別で、歴史の 帰趨を鑑みても、傾きすぎはよろしくありません。最近、ニュースで右翼だの右傾

化、右翼政治家などと目にし耳にもするが、どうにも慣れてきているようで…近隣国の情勢が情勢だけにとは言いながら、どうもよろしくありませんな。
 なべて傾き過ぎには敏感でありたい。右と左のバランス取りは、モグラ叩きの要領で、右が出たら右を、左が出たら左を叩かにゃ。

天誅(鹿児島、白玉醸造、米・芋)
 なぜ、かようなおっかない尖ったネーミングになったんだろうと首傾げつつ‥‥
 ♪♪星は何でも知っている~という歌が昔大ヒットした。♪♪夕べあの娘(こ)が泣いたのも~。今なら流行語大賞でしょうな、きっと。
 天体つながりで、お天道さまについて。
誰が見て
いなくてもお天道さまが見ているぞ。すべてお見通しだ。天知る・地知る・我知る(そして星知る!)で、必ず天罰が下る。だから悪いこと、恥なことするんじゃないぞ。昔の親は偉かった。家庭教育の、躾のイロハですな、今も。

 そして本題の「天誅」について。
 幕末にその名もずばり天誅組という、あだ花のような尊皇攘夷の武断組織があった。昭和の2・26事件では、将校たちは「天誅!」と 叫んで要人暗殺に走った。
 共通するのは、自分たちの主張する「正義」を問答無用とばかりに武力で実現しようとした点。「
天誅!」と声を発すれば、主張するところは正義となって行動は免罪されるーー、 そんな魔力がこの言葉「天誅」にあったのかも知れません。やはりおっかない言葉です。

 《《ここでなぜか、シンガーソングライター中島みゆきの歌「ノーバディ・イズ・ライト」を思い出す。誰も正しくない、100%正しい人なんていない。イデオロギー対立が果てない人間社会の真理を衝いています。》》
 例えば、「平和安全保障法制」が「戦争法案」だと指摘される怪、憲法違反と指摘される法案が閣議決定される怪。まさしくノーバディ・イズ・ ライトですな。
 ネーミングの素案は、天与の焼酎、天恵の焼酎を意味する「天酎」という造語だったと
か。もし「天酎」なら、こころ平穏にニコニコ顔で飲めたのに、残念。



▶帥(そつ)(鹿児島、さつま無双、芋)
●ん?の第1弾。
 師かと思ったら帥ではありませんか。横棒が1本載っかっているかいないかだけだが、大層な違いです。似過ぎ。
 お笑い芸人、ゴルゴ松本さんのベストセラー「命の授業」風に字面を解釈するとー。
ーー何の
道であれ、あらまほしきは師。師なくてはフラフラ迷路を行くがごとし。横棒1本は実はフラフラ抑止の綴じ蓋なんですな、ホント。師の役割をこの横棒が暗示しているのです。

●ん?の第2弾
 対して帥の字。元帥(げんすい)などの熟語でおなじみ。先
の大戦では、天皇の大権の一つだった陸海軍の統帥権(とうすいけん)を軍上層部が 勝手に侵犯、やがて暴走し悲惨な歴史の結末へとつながった。この字に軍関連用語のイメージがあって、いまわしい過去の記憶が連なっているから、どうしてもこの字、使用をためらいがち。
 
●しかし、救われました。
ラベルをよ~く見ると、「そつ」とルビが振ってある。
ネット検索で、「そつ=帥」を調べると、古代律令制下の太宰府〝長官〟とある。要するに九州方面の防人たちの、そのトップ、ボスが帥(そつ)。「すい」と「そつ」とで大違い。今回、初めて知りました。
 
 
●ん?第3弾
 鹿児島では、居酒屋で「おいのそつ」と頼むと、キープしてある俺の焼酎が出てくるとか。鹿児島弁でそつとは焼酎のことなんですな。ショーチューから、ショチュへ、さらに
ソツに。こう転訛したと容易に想像できる。
 帥の字を、「す
い」ではなく、太宰府長官の「そつ」と読ませる。ネーミングの眼目は、蔵元の狙いは、言わずもがな焼酎圏域のトップの座をアピールしたいということでしょう。太宰府を引っ張り出してくるなんて、九州のこだわりが透けて見えます。

 天誅といい、帥といい、最初どっきり、最後な~んだ了解という、ネーミング考現学でしたな。

きょうは、これにて。
  ポパイに、ほうれん草
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