すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">焼酎ネーミングシリーズ《44》 良い夜サ酔い夜サ、のみよし </span>

 芋焼酎といえば、なんといってもまずはサツマイモだが、やはり娑婆は広い。北陸にはなんと、意外にも里いも焼酎があり、さらには稀少な丸いも焼酎まである…。

 ◆良い夜サ酔い夜サ
富山県南砺市、里芋、玉泉堂酒造)

♪ヨイヤサ ♪ヨイヤサ
遠くから段々、祭りの声が近づいてくらぁ
♪ヨイヤサ ヨイヤサ ♪ヨイヤサ ヨイヤサ
南砺・福野の夜高祭り

夜ふけて
灯りはあかあかと揺れを増し
曳き手にお神酒がまわるころ
下の山車がぶつかりだす
ええ、昔はなかなか物騒な祭り見物でした

そんな祭りのにぎわいを聞きながら
南砺特産を仕込んだ里いも焼酎をちびりちびり。 ♪肴はさといも田楽でいい~、
「良い夜サ、酔い夜サ」がいい~なんて。
それにしても [上手くて旨い字]を当てたもんです。

 ● ここらで祭りのかけ声の考察
東京弁にして標準語、全国共通のわっしょいわっしょいなんて、なんか薄味で物足りませんな。
その点、地方の掛け声のこくのあること。
実は、砺波、福野、庄川、津沢など、砺波平野は
そろいもそろって♪ヨイヤサ ヨイヤサ。
ヨイヤサの宝庫なのですな。
ただ、高岡伏木の「けんか山」は不思議なことに、ヨの一字抜けの
♪イヤサー イヤサー」なんですな。
富山県内の、穀倉の村々と古く舟運の町でこの違い、
どうしてこうなったのだ?

同じ行燈祭りの範疇に入る、青森ねぶた祭りの掛け声は、
つとに有名な「♪ラッセラー ラッセラー」。
まさかラッセル車とは関係ありますまい(冗談)
ラッセラーの由縁、語源知りたく思います。
と、青森ねぶた(B)と弘前ねぷた(P)、こちらの違いも謎ですな。
土着ならではの謎。作られた観光祭りもいいけれど、やはり土着の祭りの方がいい。



 ◆のみよし
(石川県能美市、宮本酒造店、丸芋)


 ♪芋にもいろいろありまして、 サツマにジャガイモ、サトのイモ〜


芋は芋でも丸芋は〜〜♪

懐かしの宴会ソング、 松ノ木小唄の替え歌にのせて
並みいるイモに負けるなとばかりに
加賀丸芋」が芋焼酎戦線に参入したとか
その風貌のたくましいこと
こぶし大ほどの丸芋はほとんどが、
ゴツンゴツンのデコンボコン
ツルッと丸いのは、稀れも稀れ。

産地は手取川扇状地、能美、小松、川北の近辺 戦国の世、柴田勝家率いる織田軍
上杉謙信の軍勢が衝突した「手取川の合戦」の一帯

川筋定まらぬ暴れ川の砂利、石ころにもまれ、
あっちに転がりこっちにぶつかり
泥土の少ない土質ゆえに「ツル丸」になる暇なんぞなかったと思われる。
山芋、自然薯を遙かにしのぐ粘性を
加賀丸芋はそうして獲得した、
そうとしか思えないのです。

デコンボコンの由縁を讃えて
実直武骨な風貌を称えて
手取川丸芋」の尊称を差し上げたいくらい。。

「のみよし」は、能美良いところのお国自慢と
呑み良いの、掛け言葉にして“盛り言葉”
に違いない。かけ+もりの忖度気分ですな。 かけ、もりは年越しそばで十分堪能しました。


 きょうはこれにて。
  ポパイに、ほうれん草
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 (了)

<span itemprop="headline">番外 正立と倒立、リバーシブル彫刻</span>

◇融通無碍、リバーシブル彫刻
◇正立と倒立で作品タイトル変え


奈良公園なら燈花会に参加の際は、逆さに立てて『天地相聞歌』
、「石川

の石を彫ろう会」の彫刻展では、当初に予定していたタイトルで『G線上の結々(ゆいゆい)』
同一の作品に対して、倒立の場合と正立の場合とで作品名を変えました……。抽象彫刻ならではの融通無碍であり、こういうのをリバーシブル彫刻とでも言うのでしょうか。

●予期せぬ展開でしたな。石彫り場で遠目に眺めては彫り、彫っては眺めていると、周りから逆さにしてみたら
と≪逆立ちの奨め≫があり、いざ実際に支えの心棒が通ってみると…。台座の上で見事逆立ちに成功。この姿が案外いいんですな、加賀鳶の梯子乗りの妙技みたいで。当の石もさぞビックリに違いない。で、万葉の歌よろしく奈良向けタイトル「天地相聞歌」とした次第。
奈良公園の一角でひそやかにぼやき漫才が聞こえてくる。

●天:おーい地よ、景色が突然逆転したけど、大丈夫か〜 元気でいるか~?
地:大丈夫だぁ〜、めまいがすらぁ、三半規管が面食らってら

ぁ。そっちはどないだ〜
天:かなわんな、こな
いなこと事前協議の対象やで~、われわれに対して説明責任があるはずやけどな
地:まぁ、
そない怒るな、血圧上がるぞ、血圧上がったらろくなことないぞ、いっぺん懲りとるやろ、まぁまぁ抑えて抑えて。

万葉の地で、石川産の石、滝ケ原石の堂々巡りの問答ならぬ、ぼやきが続いたとかや。

●もうひと
つのタイトル「G線上の結々」も解題する。
何しろ、「結」は、「石川の石を彫ろう会」の発足20周年の共通テーマだった。あだや疎かにはできないのだ。

さて、GGと書いてジージー、爺々と読む。つまり昨今ではGは好々爺世代、シニア世代を意味する表象らしい。
幼少よりさまざまな人と出会い、無数の結い=縁を紡いできた。仏の教えに「結縁(けちえん)」という言葉もある。結の一本の線は、時に右へ時に左へ、上り下り、行きつ戻りつ、さながら山の稜線をたど
るように時に分岐を繰り返してきた。そして不思議なことに還暦過ぎても、老いてもなお、新たな出会いがある。
であれば、人の一生は、結いの稜線を歩んで行くが如しなんですな。その足元おぼつかなさは、エッジの赤い線の意味するところです。

●「G線ー」はもちろんバッハの名曲タイトルのもじり。しかし、それにしても、なんか大阪道頓堀の、一粒で二度おいしい、みたいだな。リバーシブル彫刻などとは、少々遊びすぎでしたな
。自戒自重。

きょうは、これにて。
ポパイに、ほうれん草
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(了)

<span itemprop="headline">番外 久しぶり東京 ケロリン出版の街に</span>

番外編 黄色いケロリン桶は銭湯文化の象徴 
東京・古書店街 大手書店の店頭に進出

過日東京に所用あり、ついでにあちこち寄ってきた。往々、ついでの用の方がより印象深かったりするから、人生不可思議ではある。

●その1、神田神保町
テーマ

パークならぬ古書のテーマストリート。ブックオフ系の店ではなく、書物としての中身で価額が評価される、いわば純粋古書店ばかり。だからここへ来るとほっとするんですな。
冨山房だの一誠堂だの東京堂だの看板を見やりながらぶらぶら歩いて、三省堂書店ビルに来てビックリ。なんと、店頭をケロリン風呂桶とタオル、ストラップなど一族郎党が飾っている。国際的にも名高い神保町に、ケロリングッズ
のコーナーとはこれいかに??

そっか、ゲストハウスに泊まって銭湯に出かけるのが日本文化体験の人気コースのひとつとか。人前での素裸に抵抗のある外国人旅行客の間では「水着で銭湯に入りたい」という要望もあるとか。そうだ、黄色いケロリン桶は、もはやはえある日本の銭湯文化の象徴なのだ!?。

♪ケ~ロリン、ケ~ロリン ♪あ~おぞら、♪晴れた空~ 誰あろうCMソングの作詞者はサトーハチローだそうです。 
いたってわかりやすい薬のネーミングといい、宣伝媒体に風呂桶を選択したことといい、越中富山の置き薬メーカー内外薬品の先見の明が光ってますな。
家庭風呂が普及し、あまつさえネット広告がのしてきても、どっこいそれでもケロリン桶は意気揚々生きている。出版・書店のメッカに進出だ。
銭湯文化を語れケロリン頑張れケロリン
 やがては、ATM機のような電子書籍ダウンロード端末が個々の書店に置かれ、電子出版により絶版の本も続々復刊してくるに違いない。神田神保町では、古書に限らず不易なものは不易ものとして時代を超えていくということだろう。

次いでは、「さぼうる」。地下鉄神保町駅を降りて小路にある古色いっぱいの、レトロというより「ビンテージな喫茶店」。小振りなテーブル、いす席に落ち着くと、
タイムスリップの始まりとなり、煉瓦の仕切りに残る落書きやカップルの名に見入ってしまう。同じ席に座ったよしみで、尋ねてみたいですな。今はどこに、その後どうしている?と。この店ではスマホは似合わないし、開くなら読みかけの文庫本でしょうな、
さぼうるはスペイン語で「味」のこととか。決して「サボる+油を売る」ではありませんから。テイストですから、念のため。

● その2、上野アメ横界隈

 テレビで聞いた外国人旅行客の一言、「一番面白いところアメ横」に触発されて何十年ぶりかでアメ横に。確かに、例えば鞄なら鞄だけを探して歩くと、やはりアメ横は面白い。混雑、雑然、諸事いろいろ、ついさっきもここ来たよな、あれ?。雑の魅力
面白い居酒
屋にも遭遇した。店の奥へ長い長~いカウンターが続き、待つこと暫し、ようやく“お一人様“の空きができた。「いったい何人が一度に座れるの」と仕切り役の店員さんに尋ねると、丸めない数字で「56人」と即答が。
隣の客の奨めで、名前

は知っているけど飲んだことのない焼酎の「ホッピー割り」とやきとり5本盛り合わせを。そして看板メニューという馬肉の煮込みも。手許忙しい店員さんの説明では、7年前に元旅館を改装してオープンしたそうで、したがって2階座敷席は百人を優に超すキャパシティーがあるとか。
56人掛けはおそらく日本一長いカウンター。であれば、「大統領!」(店名)の掛け声がかかってもおかしくないよな。界隈には規模は違うものの似た雰囲気の居酒屋が多数。北陸新幹線のおかげで上野駅終発時刻まで、上野の宵が満喫できるとは。いわゆるサラリーマンのメッカに、上野も追加ですな。

きょうは、これにて。
ポパイに、ほうれん草
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(了)



<span itemprop="headline">番外 芸術の秋 合鹿椀</span>


芸術の秋

◆剛にして豪なる漆器椀できた
◆「561」、「Go!Rock one」



● 金沢卯辰山工芸工房の漆芸体験教室に通い
木地に布を着せ、漆を重ね塗り、重ね塗りして
研いで磨いて 磨いて研いで
そうしてオンリーワンのマイ合鹿椀(ごうろくわん)ができた。
スタンダールの小説ではないけれど、
気に入りの配色赤と黒」の2椀である。


◆ こういうのを当て数字とでも言うのかな。
廊下の案内板に書いてあった。うまい。
合鹿椀、561


 ん? 合鹿椀、561、、、
ときに数字は文字を超えることがある
当て字ならぬ当て数字は
暗号めいて簡単至極、使えそう。

 もひとつ、追加
合鹿椀、Go! Rock one
ん? 合鹿椀、Go! Rock one、、。
うーむ、漆の世界にも
ロックがやってきたか、
ロックンロールだ、チャックベリーに
プレスリービートルズ、、、
ときにロックは革新を要求するからな
漆芸作家の、内に秘めたるロック心の発露か。

● GO&GO
行ってみようぜ、やってみようぜ、そこの人
ちょいとその先、曲がり角まで
行ってみようぜ 未知への道草
Rock心を引っさげて
めげず臆せず、
GO&GO
きっと、ロックが何かを連れてくらぁーー  

つらつら忖度するに
「Go! Rock one」とはこういうことかいな?


● 「合鹿」は能登町(旧柳田村)の地名。
柳田村は能登半島で唯一、
海に面し
ていない自治体だった。
鹿に出合いそうな、

純な山里で産まれた椀の名、それが合鹿椀。
こうも書いてみたいですな、以下、冗談ですが。

合六椀……
加賀の大名庭園「兼六」なら、
能登食椀は「合六」なのじゃ。
兼六の「六」、六勝
景はさておき、
合六の「六」とは何ぞや

剛禄椀……
何せ、どっしり存
在感あり、肉厚で頑丈。
素っ気ないほどに加飾なし。
だから手にずっしりくる
「剛が何よりの禄」つまり剛禄は褒め言葉なのじゃ。

豪録椀……

ご膳の上に置くより、床に直接置いて食事した
だから高台はもともと、高く広く錐体に近い台形
愛でるより使え、、日々フルに使え
豪快な漆器を歴史の記録に留めたい。だから豪録椀。

合鹿椀の、漆塗り込めた木肌を見ていると、
実にいいあんばい、ですな。
輪島塗の祖型とされる合鹿椀、ためつすがめつ……いい景色。
(右下の写真・・・どっしり感あふれる合鹿椀のイメージに似る、豪快無比な石灯籠。不知火型の土俵入りのような。小松市滝ヶ原町、八幡神社で)

きょうは、これにて。
ポパイに、ほうれん草
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<span itemprop="headline">焼酎ネーミングシリーズ《43》 日本の夏、くじら</span>


 夏の終わりにどこの家庭でもお世話になったはずの蚊取線香を、いやいや、酒のおいしくなる秋の始まりに鯨飲(馬食)とならぬよう自戒を込めて鯨を、取り上げる。共通項は画面いっぱいの純朴なラベル絵。字が無い!

◆日本の夏焼酎
大分県、老松酒造、芋・麦)


● 
なんだこれは! こんなラベル有りか?
大事な商品をアピールする画面に描かれているのは
何の変哲もない、ごくごくありきたりの蚊取線香!、のみ!
びっくりどっきりの焼酎の“顔”である

が、上方のサブラベルをよ~く見ると
何やら字があり、「日本の夏焼酎」と。
画面の絵と、サブラベルの字。そうかそういうことか、
この判じ物、解けるには解けたけど、遊びすぎだな。

◆ 想起せよ、蚊取線香の名文句を
渦巻きが「金鳥の夏!」とほえれば
打ち上げ花火が「日本の夏!」と答える
さながら往年の歌謡曲「二人は若い」の世界ですな
♪あなたと呼べば、♪あなたと答える~~、、

ただし、往年の二人も今や老境に至れり
♪「お~い」と呼べば、♪「なにさ」と答える
ぶっきらぼうに、しかも初々しさはとうに消えた
お酒も糖質を避けて蒸留酒にシフトしたとかや、健康のため。

それにし
ても、金鳥の夏、日本の夏」とは
失礼ながら、大きく出たもんですな
わずか8字をきっちり、4字ずつに分けて
畏れ多くも畏くも……「金鳥」「日本」並立関係に。

大日本除虫菊という株式会社名は知らなくても
ドドーンと花火があがれば、
ついつい口に出る、「金鳥の夏~、日本の夏~」
けだし、稀代の名キャッチコピーですな。

鶏冠(とさか)はまぶしい金色
煙草のゴールデンバットと同じで
殺虫剤業界の金冠めざす
創業者の決意の象徴なんでしょうな。

働き者のクロアリ押しのけて
外来の厄介者こそはびこるのかな
最近の怖いものに「火蟻(ひあり)」あり、
「除虫」、殺虫の効果に期待しましょ。


◆くじらのボトル

 (鹿児島県、大海酒造、芋)

◆ いさましい+さかな=いさな。
勇魚と書いて「いさな」と読むとかや
古語で、くじら
のことである。
でも、この2字からは、海面を尾がひとたたきすれば、船の一隻や二隻はひっくりかえりそうな、海棲哺乳動物のスケールが彷彿とはしてきませんな。

一字違いの「いさざ」という小魚もいるしな。
ぴちぴち跳ねるのをいただく「躍り食い」で知られる
「いさな」と「いさざ」。

音感の似た者同士が、巨大と極小の対極とはこれいかに?

◆ 「いさな」もとい、丹精の銘柄「くじら」をアピールすべく
蔵元がラベル画面にど~んと置いたのは、ご覧の通りの絵。
歯をむき出しにして、笑っているのか、今から鯨飲(馬食)にかかるのか
あふれる茶目っ気に親近感も
湧いて、まさに “絵に勝る雄弁なし” ですな。


◆ わが国の捕鯨は、和歌山県太地町に発祥し(古式捕鯨)、
高知や山口などの“鯨どころ”も有名。
沿岸捕鯨、船団方式による遠洋捕鯨と発展、拡大した。
今は昔、あぁ球団「大洋ホエールズ」の頃が懐かしい。

 縄文の真脇遺跡は、小型鯨類のイルカ漁で繁栄した「イルカ村」だった。
大陸には陸の動物タンパクが支えた「陸の文化」があり、
海に囲まれた国には、海の動物タンパクが支えた「捕鯨の文化」があった。
陸海問わず、相互に、敬意とともに感謝せねば。


 ◆それにしても、くじらは、なぜ魚へんに京なのか
 スパコン「京(けい)」が登場してきたとき、直観しました。
億がゼロ8個、兆が12個なら、さらに上のゼロ16個、それが京であったな、と。
そうか、途方もな
いスケールが「京」なのだ。イメージ的に鯨と書く所以、わからぬでもないな。

 また、一頭とれれば、七浦を潤す。七つもの漁村を一挙に豊かにするとも。
してみると図体も恩恵も「京(けい)サイズの魚」、それが「鯨」という会意文字なのだ。
こう解釈すると、字面ひとつから世間が、社会が見えてくる。

ちなみに、(クジラ+ゴリラ)÷2=ゴジラ 。
ハリウッド映画で、MLBで、日本産の怪獣、怪物ともによくぞ活躍してくれました。記憶に新しい痛快事です。

きょうは、これにて。

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<span itemprop="headline">番外 なら燈花会、あの箸墓古墳へ</span>


盂蘭盆へ石も走った北陸道 卑弥呼の墓?にもごあいさつ
 
● この夏のマイイベントの一つは奈良行きだった。(写真は順不同です)

● 仏都・奈良の万灯会なら燈花会」に、石彫り愛好グループ「石川の石を彫ろう会」から作品20点が“参加”。薄明かりの園路に映える作品群に、金沢から遠路はるばる、奈良公園に対面しに行ったのである。


● 猫が仰向けに眠っているのか、肉球でじゃんけんをしているのか、あるいは腹が鳴ったのか、タイトル「ぐー」。子供たちが肩を組みたき火を囲んでいる「」、鞍馬天狗の頭巾のようにも見える吊り灯籠風「ほたる」など…、素人が思い思いの形に彫り上げた灯りの作品群は、いろいろ想像させてくれるのか、カップルや親子連れになかなかの人気でした。奈良出張展示の甲斐あったというものです。

 自作のタイトルは「天地相聞歌」(写真)。
こちら天・・お~い元気か? 大丈夫か?
こっち地・・大丈夫だ~、そっちはどないや?
いつのまにか、天地が逆になってらぁ
逆立ちは疲れるな
めまいはする、頭痛もしてくらぁ
宅配業界では天地無用と、

アパレルではリバーシブルというらしいけど
かなわんなぁ。元に戻れるのかな。
人知れず、ボヤイテマス。
奈良公園で5日から14日まで。石は16日、トラックで復路を金沢に無事帰還=写真》

翌日は近年、卑弥呼の墓と俄然有力視される前方後円墳、「箸墓古墳」(桜井市)に立ち寄った。三輪山を望む巻向地区に入り、尋ね訪ねて田んぼ道をひょいと曲がると、柵の続く緑なす小山はあった。全長280メートルとか。

鳥居脇の高札に
孝霊天皇皇女 倭迹迹日百襲姫」とある(写真)。

折りよく、橿原市出先機関から軽トラで下草刈りに来ていた若い宮内庁職員と遭遇。これ幸いと姫の名の読み方を聞いた。

やまとととひももそひめ
まったくもって舌をかみそうな。ふーーん???と言うばかり。
日本書紀に記され眠る姫の名だそうだが、この被葬者の実体が果たして、日本史の永遠の謎、邪馬台国の女王、卑弥呼なのか。
幹線道路沿いには、「ひみこの里」の大きな看板が立ち、桜井市のHPも「ひみこの里」をキャッチフレーズにふるさと振興・観光振興に力が入る。
宮内庁職員氏に「地元はすっかり断定調ですね。卑弥呼の墓と裏付ける決定的な埋葬品が、実はもう出ているのでは?」と尋ねたが、当然「……」だった。民間の興奮はさておき、
やはり、あくまで、まだまだ陵墓参考地らしいのである。

● それにしても比定されている姫の名。気になりますな。
単に音を示す漢字を連ねたか、ある程度、漢字の表意性も汲んであるのか。
ちなみに書紀によると、夫の正体を三輪山の蛇(蛇神だった)と知り、嘆きのあまりか、あるいは怒りのあまりか、姫はほと(=古語)を箸で突き刺し亡くなったとか。

自死ですな。

近畿の一部県にはサ行の第5音、九州の一部県にはば行の第5音を二つ連ねた、あたりをはばかる方言があるとか。誤解を恐れずに言えば、先述の「迹迹」(トト)と同系列ではなかろうか。日本書紀にみえる姫の名は、なにやら姫の自死の経緯を、物語をあっけらかんと語っているように思えるのだ。
古代の葬送のネーミングはかくもおおらか?!でありました。(この段、余談)

ほか、会員仲間3人で石舞台古墳法隆寺など巡ってきた。(写真は16日、金沢に帰着したトラックから石作品を降ろす作業)

   きょうは、これにて。
ポパイに、ほうれん草
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(了)





<span itemprop="headline">番外 創業の地への敬意無し 社名も泣く</span>


創業の地へ敬意なし
◇「不二越」の社名も傷つける
◇会長の富山県民性を謗る発言
◇トップの蒙昧は企業に害
「山向こうに勇躍」の歴史学

●別にシャレではありません、新聞記事を一読して、思わず「ホンマかいな」とつぶやいた。自社創業の地を誹謗、愚弄する物言い次々。まるで国内版ヘイトスピーチの類ではないか。

●産業用ロボット製造の東証一部上場企業「不二越」(富山市)の本間博夫会長(71)、5月中間期決算発表の記者会見で次のように話したというんですな。(北國新聞7月12日付記事から)

「富山で生まれて地方の大学に行ったとしても、私は極力採らないです」
「閉鎖的な考え方が強いから」
「富山で生まれて富山の幼稚園、小学校、中学校、高校、不二越、これはだめです」
「地方で生まれて、地方の大学もしくは富山大学に来た人は採ります。しかし、富山に生まれて地方の大学に行った人でも極力採りません」
「ただし、ワーカーは富山から採ります」。

▼5段活用みたいな人事採用方針から分かるのは、これは“うっかり失言”の類ではないということ。おそらく自身の企業人生から感得したとんでもない確信と偏見に基づく攻撃、侮辱、愚弄、名誉毀損の類であるということ。
 では、会長はどこの人? 東京都出身と知り、あぁなるほど、ふるさと意識が希薄なのも道理と納得。誇るべきふるさとの無い故に、他のふるさとを侮辱して何ら恥じるところがないのだ、これまた道理である。

 ▼「閉鎖的」だという偏見に、富山県生まれとして少しく反論を試みる。先人に学ぶー。
 安田財閥を形成し東大安田講堂を寄付した安田善次郎。力士から転じて日本の鉄鋼王となりホテルニューオータニを創設した大谷米太郎、YKKという世界企業を築いた吉田忠雄、メディアミックス角川書店の祖角川源義浅野セメント浅野財閥浅野総一郎、さらには井波瑞泉寺造築から社寺建築のパイオニアとなった松井建設、清水建設といった富山県人の手になる企業も……。
 「富山生まれ」の先人たちが、立山連峰彼方の地、東京で創業し近代日本のインフラ整備に稀有な足跡を残しているのである。百歩譲っても、「閉鎖的」ではとうてい成し得ない事業ばかりである。
 
 加えて、たとえば名も無き「売薬さん」「薬売りさん」たちの歴史。「先用後利」というビジネスモデルを掲げ、数多の今で言う家庭薬配置員が全国津々浦々に顧客を開拓し、訪ね歩いた足跡がある。これまた然り、閉鎖的では成し得ない事業である。

「仰剱立志」という墨痕鮮やかな揮毫に出合ったことがある。「峻険剱岳を仰ぎ、大きな志を立てる」。なるほど「富山生まれ」の先人たちが連峰の山向こうに思いを馳せ、志を抱いて山向こうへと旅立ったのも分かるような気がする。ひょっとして立山連峰の姿が、見果てぬ山向こうを志向する「後天的な遺伝子」を県民の胸の内に醸成しているのかもしれない。
 であれば、富山出自の企業のトップであれば、富山生まれの内に潜む「後天的遺伝子」を励起し 発揚させるのが、人を採用し育てる側の務めではなかろうか。
 
●不穏当な発言は、創業の理念をも愚弄したと思われる。
社名不二越=不二+越」であろう。仏教の不二(ふに)、即ち二つと立たず一つに帰するーとは別に、ここは素直に不二〈ふじ〉=二つとない、比肩するもののないことと解釈する。富士山を不二山とも書くように。越は言わずもがな越中である。
 つまり越の国に発してわが国不二の企業を志向するーという気高い理念が読みとれるのである。社名も、失礼な発言を憤っているのではないか。

●富山・東京から東京へ本社一本化計画の発表の中で飛び出した「富山県民性」を攻撃する発言。自社「不二越」の沿革、富山の地勢と歴史について余りに蒙昧だったと非難されてもやむを得まい。会社の依拠する「地元」へのリスペクトが全く欠落していたと指摘されてもやむを得まい。

 結果的に、従業員、OB、若者も含め県民一般を傷つけた。翻って、創業の理念までも、である。
 再びの富山県民性の励起、発揚をと願う。
(了)