すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">番外 「石の里」のアーチとアート</span>

番外 「石の里」のアーチとアート
(石川県小松市滝ヶ原)




◆川原から石橋の曲線を鑑賞
◆山肌に大穴、採石場の坑道
◆手彫り歴60年、前庭に「龍虎」


●ここは小松市滝ヶ原。良質な緑色凝灰岩、「滝ヶ原石」の産出地である。こがねの稲田の上方、山肌にぽっかり空いた採石場跡の風景が、滝ヶ原の在所は「石の里」である、と語っている(写真下)。
石川の石を彫ろう会の面々一行は、石材荒
谷商店さんの坑道を見学。天井の高い坑道を、奥までずっと歩くことができた。台車に取り付けたチェーンソーにより豆腐のように同形同寸、四角四面に
切り出す現代の採石技法には舌を巻いた。

●石の里という由縁の一つは、明治三十年代から地域が力合わせて、大水のたび流されてしまう木橋に代えて、アーチ型石橋を築造してきたこと。川筋に沿って5つの石橋を巡ったが、最多の時で十一を数えたとか。アーチ橋は川原に降りて、見上げてこそ端正、優美な曲線を鑑賞でき、絵にも写真にもなる。(写真上)。


●身をくねらせ躍
りかかる龍。対して、目をむき“獅子吼”する虎。自宅前庭にレリーフの衝立がごく普通に、当たり前のように
、さりげなく据えられてある(写真下2枚)。
写真に写り込んでいる瓦屋根と対比すれば、その「竜虎」のおおよその大きさが分かるのではないか。単に石工というより、わが在所の滝ヶ原石に
、自在にノミを振るう石彫家の技と言える。










 ●もうひとつ。高々と片手に玉を掲げる、作品名羅漢 半託迦尊者(はんたかそんじゃ)」の像。奥行きからして浮き彫りというより、もはや立体に近いのである。ほかにも工房には動物、神仏の像が所狭しと並ぶ。築造方法が学べるミニアーチ橋も展示され、工房はさながらミニ私設博物館のよう。
 手彫りした中谷篁(たかむら)さんに、ノミを手に石と向き合ってきた年月を問うと、「六十年はたつな」。感嘆続きの石の里研修バス旅行だった。

●ちなみに、富山県射水市には鏝(こて)絵師と異名をとった左官、竹内源造の記念館がある。土蔵の白壁いっぱいに鏝ひとつでそれこそ竜虎など、躍動感あふれるレリーフを描き出した。対してこちらは、滝ヶ原石にノミひとつで、やはり生命感あふれるレリーフを造形する。類い稀な技術の継承を願いつつ、小松市で公設展示できないものか、とこう考えた次第。

きょうは、これにて。