すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">忘年会 宴会屋ビル 居酒屋</span>

◆街は 忘年会の季節◆
◆エンカイヤビルもいいけれど
◆がんばれ赤提灯、縄のれん

 ビル一棟まるごとが一軒の飲食店といえば、東の代表は浅草の「神谷バー」、西代表は以前の道頓堀「くいだおれ」。

  神谷バーは十数年前とある雑誌「サライ」で、デンキ(電気)ブランという蒸留酒(ブランデー)が売りの我が国最初のバーと知った。で、わが国居酒屋の歴史を、ただそこにあるだけで物語る同店を、浅草1丁目1番地1号に訪ねたことがある。浅草1丁目1番1号ですぞ! 居酒屋まるごとを私的登録文化財にしたいくらいですな。

 そこここのテーブルで昼間っから一人で、あるいは少人数で酒を楽しむ人がいて、子供連れ、家族連れもいる。北陸から遠来の当方も、目当てのデンキブランをおでんなどで軽~くいっぱい。2階がレストラン、3階が割烹だそうで、大衆食堂のような、それでいて誰に遠慮も要らない不思議な飲める空間でありました。

  道頓堀「くいだおれ」は、大阪らしいストレートな屋号とともに、店頭の人形オブジェク単体で観光名所と化した。人気の人形「くいだおれ太郎」周辺のざわつきと、通りに飛び出してくるようなカニやらフグやら…の三次元看板に目が丸くなった。東も西も、いくつもの飲食店がビル内に集合しているのではなく、一軒の飲食店が大型化し堂々、ビルを構えているんですな。関東も関西もさすがの老舗と言うべきでしょう。

 さて北陸・金沢。
先日小生の参加した忘年会は、ビル壁面の屋号が駅前の夜景にこうこうと輝く、まだ新しい5階建ての居酒屋ビルで開かれた。会場はなんと3階。エレベーターで案内してくれた店員さん(お運びさん?)に聞くと、1階から3階までは、宴会の規模に応じた部屋、区画が占め、4階は調理場。5階は系列の居酒屋3店舗を経営する、自社の事務所が入居しているそうだ。

 もはや居酒屋と言うより、宴会屋?! 居酒屋から宴会屋にシフトした飲食業態なんですな。通された部屋は、椅子でも畳でもなく十数人が座れる掘りごたつ形式の部屋で、なんか和洋折衷いいとこ取りみたい。部屋の造作は階ごとに趣向が違うらしい。
 金沢でも、いまや居酒屋は堂々、ビルを構える歴とした企業なんですな。

 居酒屋とはそもそも、自慢の酒を量り売りする一方で、立ったままの客にちょいと軽く酒を飲ませた〝居酒〟が始まりとか。〈量り売り+居酒〉から〈居酒のみ+簡単なアテも出す〉営業スタイルに切りかわり、客の長居を図るべくおのずと立ち飲みから座り飲みになったのでしょうな。当然の流れですな。
 しかし昨今の都会では、客の回転率を上げる方が儲かるというわけで、立ち飲みスタイルが人気とか。「どっちが儲かりまっか」、まさに立ったり座ったり、商売スタイルは巡るー。

 それにしても、誘蛾灯のごとくに客を迎える装置、由緒正しき「赤提灯」や「縄のれん」がめっきり少なくなりました。一次会は堂々のエンカイヤビルもいいが、二次会、三次会はやはり、大将なり板長、女将さんの声が迎えてくれる居酒屋がいいな。がんばれ、赤提灯、縄のれん。

きょうは、これにて。