すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">屋号の復権</span>

◆やね屋◆

喝采! 〇〇屋の復権、回帰
ネット時代の起業が背景に
アピール度優先、「職能+屋」

 金沢市内の国道を走っていて、「やね屋」という何ともインパクトの強い看板に出合った。
小さく株式会社と添えられており、これは歴とした社名である。建築物の屋根のことなら何でもお任せを、というメッセージが最前面に押し出された、ぶっきらぼうだが力強く分かり易いネーミング。はたまた、世間に仕事請負職能集団として認知してもらえる屋号でもあるのだろう。


  以前、富山の方に「生産技術」という会社があった。普通ならトヨタ自動車本田技研のように社名は<固有名詞+普通名詞>で成り立っている。生産技術という会社は<普通名詞+普通名詞>を会社の名前として登記したのだからすごいというか…。小生なんぞ、初めてこの社名を聞いたとき、「えっ、それで社名に成り得るの?」と思ったものだ。この点で、やね屋は生産技術と並んで日本離れしている。何せ、固有名詞くさいところはどこにもないのだから。

 やね屋の出色もう一点は、わずか3文字、いや3音節の“回文”になっている点。前から読んでも後ろから読んでも、やねや。必ず、起き上がってくる起き上がりこぼしみたいなもので、「いよっ、やねや~」と叫んでみたくもなる。
 
 ほかに、金沢市内を走り回ってみると、○○屋の看板が散見される。
「おかず屋」「がくぶち屋」「定食屋」も目にし、電話帳には、散髪屋、さんぱつ屋、石屋もあった。屋をつければ、すこぶる簡単明瞭に取扱商品、提供できるサービス分野、仕事分野をアピールできるのがメリットに違いない。社名になっているケースは少ないと思うが‥‥。

 翻ってみれば、〇〇屋はひところ、差別的であるとして敬遠された。ことごとく「店」に置き換えられた。書店、氷店、うどん店、米穀店、金物店、家具店‥‥乙にすましたよそ行きの写真みたいに。
 しかし、昨今のこの傾向。当のご本人が「○○屋」を名乗り店にはないアピールをしている。ん? 差別的なそんな匂いなど雲散霧消し、逆に「屋の名乗り」にプライドさえ感じ取れる。「〇〇屋です」「〇〇屋を営んでおります」などと言われたら、とっさに、きっといい仕事、気骨のある仕事をしているんだろうな、と思ってしまいますな。

 そういえば、美空ひばりの歌にもありましたな、小粋なフレーズが。
「♪ちょいとお待ちよ 車屋さん(略) え~ 車屋さん」

 〇〇店や〇〇サロンだのストア、ショップ等々から、〇〇屋への変更は、いわば外来語から国語への回帰現象ですな。背景には、個人、グループによるネット時代の新たな起業が増えているのかもしれません。
屋号の復権、いいぞ〇〇屋、である。

  きょうは、これにて。