すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">焼酎ネーミングシリーズ《28》能登ちょんがりぶし</span>

焼酎ネーミングシリーズ《28》

能登ちょんがりぶし
(石川県珠洲市、日本醗酵化成、麦)

▽じょんから、じょんがら、ちょんがれ‥‥
▽願人坊の門付け、遊芸から盆踊り唄
▽念仏の口説き交え切々と?

● ラグビー日本代表五郎丸歩選手の、“五郎丸ルーティン”風に印を結び、ちょんがり~ちょんがり~と唱えると、あら不思議、とんがり~とんがり~と、とんがりやまが出て来るんですな。
 
「尖山」と書いてとんがり山。
標準語的にはとがりやまとも。3000㍍級の北アルプス立山連峰につながる低山(富山県立山町)で、標高わずかに559㍍。地鉄電車から見える、ピラミッドのような、きれいにとんがった山です。
 一度聞くと、忘れられない稚気あふれる山の名、一度見ると「あぁ、あの」といつ
でも思い出せる愛嬌ある円錐形の山。なかなかユニークな、実に第一印象の強い山なんですな。
 四股名を尖山
(こちらは「とがりやま」)という富山出身の力士もいました。地方局のテレビインタビューで、四股名の由来について問われ、「高校生時代、通学の行き帰りに電車の窓から眺めていた山」と語っていたのが耳に残っています。ーーー以上、ちょっと寄り道でしたな。


● 寄

り道はさておき、ちょんがり~唱えの第2弾。今度は野々市じょんから」(石川県野々市市津軽じょんがら」青森県)が出てきました。
 野々市
ょんからは、町から市になってもずっと変わらぬ地域の風物詩であり、代名詞。じょんから祭りの時期が近づくと、街中のあちこちでポスターが目に入り、「野々市=じょんから」に染まります。

● 津軽じょんがらは、太棹でバチも大きい津軽三味線が国際的に有名になりましたな。うねる吹雪の中を、細く一条の三味線の音が聞こえて
くる、近づくにしたがい三味の音は大きくなり、やがてたたきつけるような激しさが、さながら命の高ぶりを伴って響いてくるー。初代高橋竹山のじょんがら世界はあまりにも有名ですな。近年は若手奏者らが海外に飛び出し公演を成功させています。日本の弦楽器としていずれ、世界的に認知されるのでしょうな。
 
エレキの津軽じょんがら節、いいな
● 寺内タケシとブルージーンズのLP盤を初めて聞いたときも、びっくりしました。エレキギターによる津軽じょんがら節の斬新なこと。ほかにノーエ節、ひえつき節もエレキで。ヴェンチャーズに勝るとも劣らない寺内流エレキ・テクニックで、アレンジで、五箇山の「といちんさ」「城端麦屋節」はじめ全国の民謡を広く深くカバーしてほしいと願います。「運命」「ツィゴイネルワイゼン」などのクラシックシリーズも聞いていますがね、民謡の新たな一面を新たな音で聞いてみたいのです。

●● さて、肝腎要の「能登ちょんがりぶし」。
 珠洲や輪島に伝わる盆踊り唄の一種で、珠洲では保存会によりちょんがり節、ちょんがり踊りの継承に力が入っていますな。関西方面ではちょんがれとも。つまり、ちょんがり、じょんから、じょんがら、ちょんがれ4者はいずれが鶏で卵かは知らねども、伝播していく際に発音が転訛し、しかし根っこはみな同じのようです。
 念仏を取り入れた盆踊り唄。そのはじまりをたどれば、願人坊いわば願掛けの代参人の門付け、あるいは大道で披露して回った諸国遊芸、放浪芸にまで遡るようですな。何しろ、珠洲は中世に広範に流通した古窯、珠洲焼のふるさとであり、輪島は輪島塗の産地。江戸時代、願人坊も多く訪れたに違いありません。

 話が遊芸、放浪芸あたりに及んでくると忘れてならない人、俳優にして大衆芸能史研究家、小沢昭一翁(1929ー2012年)の世界ですな。晩年はすっかり学者の顔と、拝見致しておりました。

● ずっと気になっていた能登ちょんがりぶしという銘柄。輪島出身の友人に薦められ、遅まきながらシリーズに加えることができました。前回の「ダバダ火振」といい「能登ちょんがりぶし」といい、風土、風景が見えてくるような焼酎ネーミングでした。

 きょうは、これにて。
       ポパイに、ほうれん草
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