すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">どうにも熱い、焼酎ネーミング シリーズ20(終)</span>

 斬新、奇抜、奇想天外、奇妙奇天烈なネーミングに惹かれ、連想ゲームのような気持ちで始めた連載が第20回を迎えました。高度なネット社会、ブログという表現手段を象徴するようなラベルにも出合えました。今回は、その名前「発」「独奏会りさいたる」に仮託しつつ、終巻の思いも少しー。

既掲載は、

(シリーズ19◆那由多の刻◆欧羅火)
(シリーズ18◆えじゃのん おんぼらぁと◆次郎冠者)

(シリーズ17◆はげあたま◆河童の誘い水)
(シリーズ16◆おやっとさあ◆いつもの奴)
(シリーズ15◆ハナタレ◆不二才(ぶにせ))
(シリー
ズ14◆青木昆陽、利右衛門◆佐藤)
 (シリーズ13◆小松帯刀◆鉄幹)
(シリーズ12◆さそり◆もぐら)
(シリーズ11◆天魔の雫◆知心剣
(シリーズ10◆天孫降臨◆不阿羅王)
(シリーズ9◆晴耕雨読◆お
やじの誇り) 
  (シリーズ8◆この地に天使が舞い降りた。 天使のささやき 恋あじ◆両思ひ)

(シリーズ7◆今も昔も焼酎は、西、岩倉 月の中◆二階堂 吉四六
  (シリーズ6◆
虎の涙◆蔵人の戯れ)
(シリーズ5
◆いも神◆元祖やきいも)

(シリーズ4◆魔女からの贈りもの 魔法のくちづけ◆うわさのいい
夫婦)
(シリーズ3◆百年の孤独◆問わず語らず名も無き焼酎)
(シリーズ2◆銀座のすずめ◆とんぼの昼寝)
(シリーズ1◆六地蔵の夜仕事◆我伝直伝)


ネット時代の恩恵、個人の発信
鳥居のもと両足そろえ旅立ち
発◆
(鹿児島・さつま無双、芋)


 どんなに言葉を尽くしても、たった一言に敵わないことがある。青いボトルの白地のラベルに、たった一字「発」。なかなか意味の深~いネーミングですな。
と思った

ら、上の方に色違いの小さな字で鹿児島とある。機械栓の封緘紙にも大きさを違えて「鹿児島 発」と。な~んだ、鹿児島発の芋焼酎ですよ、ということ? それだけ?それだと、一読して了。愛想もなく、意味深くもない。

しかし、せっかく大書されているのだから、この際、銘柄「発」とみなして処遇し、いろいろ解釈を加えてみたい。

部首ハツガシラ。左右両足を揃えている象形なんですな。ややこしい書き順も、左右両足と思えば難なく理解できます。向かって左足は「フ・チョン」、一方の右足は「逆フ・チョン」。フ
トモモのフに、膝頭のチョンを左右対称で書くーと覚えて、正解です。

これを、右足を斜め下り線にチョン・チョンとやってしまうと、原義つかめず、字形も崩れてくるから、要注意。つまり本来の字の姿を教え、字形をそれらしく整えてくれるのが、筆順なのです。ラベルの青い字は、どうやら斜め下り線にチョン・チョンのように見えます。以後は気を付け、筆順を意識にとどめましょう。

次にハツガシラの下。「開」の中の「部首名・にじゅうあし」と同様に、右に曲げず伸ばしたままにする書き方もあって、これだと連想されるのは、社の鳥居ですな。

以下の光景が想像できます。弥次さん喜多さんよろしく肩に
振り分け荷物、脚絆にわらじ姿が、「村の鎮守の鳥居を背に、左右両足を揃えて威儀をただし、今から旅の一歩を踏み出す」ー。何か、時代知れずで『いい日旅立ち』の歌がバックに流れているようですな。

新字体「発」は、何事にも神々の加護を願う庶民の心根にふさわしい字になっています。弓を射る意の旧字体「發」より、ずっと意味が深いと思えますな。新旧逆ですが…。

発信、発表、発行、発刊、発起、発想、発意、発見、発掘、発現…。数多ある熟語も、おおまかには▽start▽set up▽find outの3群に分類できます。このうち、ネット社会、ユビキタス環境の進展とともに頻繁に使われるようになってきたのが、発信という言葉です。

何を発信するか? 宣伝、PRもいいけれど、あらまほしくは自己発露、自己表現の成果でしょうな。アナログ時代の発表、発刊、発行、出版は、デジタル優先時代では、単純に「発信」の語に置き換えてもだいたい通りますな。

詰まるところ、「発」は高度情報社会を象徴する一字なんですな。

思えば、大変な時代、環境、利器に巡り合わせたものです。なんとか環境、利器をうまく生かしていきたい、みながみな生きた証を残したいものです、だれしも。「発」の一字が、新たな発想、発意を誘ってくれるかもしれません。
 



ブログは基本的に、ソロの演奏者
タイプライターは楽器だった?

◆独奏会りさいたる◆
(大分・井上酒造、麦)

まるでブログのことを言っているようなネーミングです。
WEBLOG略してブログ。簡易ホームページだのネット日記だの過小評価気味に言われるけれど、どうしてどうして…。それこそ現代の森羅万象を映してカテ

ゴリーもさまざまに、百花斉放どころか、まさに千姿万態(4ケタ万)の状況でしょう。世界総数の3分の1強を日本語ブログで占めているそうですから。

 どうせネットの海の藻屑のような自分のブログと分かっていても、始めて見ると結構これがおもしろい。駄文、雑文をオンラインするときは、緞帳(どんちょう)がするすると上がっていくようなー。
ライト、リライト、エディトに該当する作業を終えた
気分は、まるで独奏会の始まりなんですな。

そういえば、パソコンもピアノも、自己表現へのインターフェース(仲介役)は「キーボード」(鍵盤)。一心に指先を走らせ、滑らせ、ときに叩く。端折って言えば、紡ぎ出されるのは、キーボードに英数かながあれば文章、黒白の細板が並んであればメロディーであるとー。

文章と音楽の近しさを証明するような、オーケストラ楽曲もあります。曲名『タイプライター』。

タイプライターが楽器として登場し、燕尾服の打楽器奏者が♪カチャカチャ、カチャカチャ、チーン♪と音を響かせる。文章作成マシーンが、軽快にしてユーモラスな、最大の聞かせどころを担っているのです。

米国の作曲家ルロイ・アンダーソンの1950年の作品だそうです。
今にして思えば、タイプライターの♪カチャカチャ、チーン♪は、無音で平板単調な執筆作業を、リズミカルなのりのりの作業に変えてくれる魔法の道具だったのです。
学生時分に購入した「ひらがなタイプライター」(ブラザー製)を久方ぶりに引っ張り出してみたくなりましたな。

ボトル表面のひらひら揺れる模様が、タクト先端の軌跡、メロディーラインのようです。よくよく見ると、「りさいたる」のひと筆書きになっている。蔵元はよほどのクラシックファン、購入と愛飲の照準も、クラシック音楽ファンに置いていると思われます。
パソコンから独奏を試みてみましょう。

きょうこれにて。連載終了です、ご笑覧に感謝。