すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">絶望の淵から希望の地平へ 《壱》</span>

●絶望の淵から希望の地平へ 《壱》●
▽2つめの病院で、一度は死を覚悟
▽休診の日曜、再び救急車で転院


一度は、2つ目の病院で「手術しても無意味」「手遅れ」と病状説明を受けた。造影剤CTの画像の上腹部にこぶし一つ半ほどの大きな腫瘍があり、肝臓の半分強が真っ黒だった。家族はまさかの事態にうつむいたまま。医師は明言を避けたのか、良性かも知れないし、悪性(癌)かも知れないという。


前夜8時頃に、総合病院の救急外来から、この循環器系病院に転送され、即刻、入院した。ゼーゼーという呼吸困難と上腹部の痛みを抱え病名も分からぬまま、まんじりともせず、一夜が明けた。病状説明は日曜早朝6時半ごろのことだ。

ベッドの上から私は、「良性の確率はどれくらい?」「仮に悪性としても、切除手術できないのか」「もうだめと言うことか」「もってあと何ヶ月か?」等々声を絞り出し、いくつも尋ねたが、返ってきたのは「手術する意味がない、かえって危険。手遅れ」ということくらい。説明は、言外に悪性腫瘍(癌)と認めているに等しい内容だ。「要するに、この先、命は無いということですね」と、自分を納得させるべく、自問自答していた。

眼前に、死を覚悟した。命と人生の終焉とは、こんなにも不意に、突然に、あっけなくやって来るものなのか。金太郎飴をスパッと切るみたいに。

呼吸困難と上腹部の痛みが、ぶり返してくる。先の総合病院でニトロペンを相次いで2粒、転送されてきたこの病院でもすでに1粒を舌下に入れている。成分のニトログリセリンには血管を急激に広げる作用があり、症状を一気にやわらげてくれるが、血圧が急低下する副作用から連続使用は3,4粒が限度とか。
ニトロの効きようから、早々に、循環器系病院に転送されてきたのに違いない。ところが、CTが捉えたのは、循環器系疾患ではなく、肝臓部位の大きな腫瘍というとんでもない消化器系の病変だったのである。

激痛に耐えかねて「対症療法でいいから処置を」「モルヒネでも何でも投与を」と訴え、日曜休診の今日一日こんな状態が続くのかと思うと、「悶絶死」という言葉さえ頭をよぎり、とうとう「転院したい,病院を替えてほしい」と医師に懇願、懇請した。いや大声ではないが絶叫していた。

そうして、再び緊急転送され、日曜の朝7時半ごろ、救急車で石川県立中央病院の救命救急センターに到着した。

【なお数日後、土、日曜のわずか2日間の入院に終わった循環器系の病院から自宅に退院証明書・診療明細書が届き、傷病名「転移性肝癌、大腸癌」と明記されていた。】
(続く)