すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">どうにも熱い、焼酎ネーミング シリーズ12</span>

 ひところ「どっきり~」番組がはやりました。ターゲットの出演者をだますだけだまして、最後に実は…と、どんでん返しを食らわせる。あまり歓迎したくない番組でしたな。焼酎界にも、どっきりネーミングはあります。
「さそり」と「もぐら」について。


 既掲載は
(シリーズ11◆天魔の雫◆知心剣
(シリーズ10◆天孫降臨◆不阿羅王)
(シリーズ9◆晴耕雨読◆おやじの誇り) 
  (シリーズ8◆この地に天使が舞い降りた。 天使のささやき 恋あじ◆両思ひ)
(シリーズ7◆今も昔も焼酎は、西、岩倉 月の中◆二階堂 吉四六
 (シリーズ6◆虎の涙◆蔵人の戯れ)
(シリーズ5
◆いも神◆元祖やきいも)
(シリーズ4◆魔女からの贈りもの 魔法のくちづけ◆うわさのいい夫婦)
(シリーズ3◆
百年の孤独◆問わず語らず名も無き焼酎)
(シリーズ2◆銀座のすずめ◆とんぼの昼寝)
(シリーズ1◆六地蔵の夜仕事◆我伝直伝)


さすがの存在感、どっきりネーミング
飲めます? 昆虫食の伝統的食材
◆さそり◆

(鹿児島・さつま無双酒造、麦)

サソリが一匹

、焼酎につかっているのかと思ったら、さにあらず。瓶をかざしてもサソリは〈居ない〉〈影もない〉。正直、ほっとしましたな。ラベルにサソリ絵があるのみでこの存在感、さすがです。旁(つくり)が象形文字の「蠍」の字が添えてあれば、ハラハラ感はさらに倍加したに違いありません…。

 テレビで見たベトナム紀行番組。市場で少年のバケツの中をのぞくと、うじゃうじゃサソリが蠢(うごめ)いている。その量、バケツの半分近く。アフリカ砂漠産と違い、沖縄県八重山諸島などアジア圏のサソリの尾に毒はない。だから、少年には川のザリガニ感覚なのでしょう。ところが、対するこちらは、大きな爪、尾を振りかざされただけで、無毒と分かっていても、後ずさりしてしまう。

存在感は歌謡曲にも及びます。歌手美川憲一の往年のヒット曲「さそり座の女」。歌詞の末尾2行は
(1番が)
♪そうよ私は さそり座の女
さそりの星は 一途な星よ
(2番が)
♪そうよ私は さそり座の女
さそりの毒は あとで効くのよ

当初シングルレコードのB面予定だったのを、歌手本人が例のあの口調で「こっちがA面よ、それでえ~めんよ」(ホント?)と指摘、急きょ差し替えて販売したところ、大ヒット。さすが恋心の機微をうたう演歌歌手の直感です。はやり歌市場の流れを敏感にキャッチしてましたな。とにかく、B面予定を直感ひとつで世間の記憶にしっかり残したのだから。
サソリの〝いい毒〟今もじんわり効いてます!?。

少年のバケツから察する限り、ベトナムではサソリは昆虫食の立派な伝統的食材に違いない。空港には土産用にサソリ入りの酒も売っているとか。飲む度胸、酔ってみる度胸ありますか? サソリ絵の焼酎で十分ですか…。




嗜好品の市場競争、勝ち抜けますか
かっこいいもぐら(土竜)登場?

◆もぐら◆
(鹿児島・さつま無双酒造、芋)

なぜ、酒の名前に「もぐら」なのでしょう?。「もぐら」むき出しで商品イメージが上がるとは思えません。かっこいいもぐらでも登場してきたのでしょうか? 


 以前、テレビの理科系の番組で、畑の表面を隆起(もぐらの通行跡)が走り、もぐらがひょこっと顔を出すシーンが大写しになった。画面いっぱいに、もぐらの顔。愛嬌ある? 冗談言っちゃいけません。思わず視線を外してました。
土中で芋ともぐらは仲良しだって? 冗談言っちゃいけません。嗜好品の酒を嗜好する前から、視線を外すようでは市場競争のゆく先が思いやられますよ。

と、ネーミングの負の部分ばかりを言い募ると、いくら陽の当たらない土中棲息動物とはいえ、かわいそうな気も。がんばれファイト!もぐら。

というわけで、今年の映画に『土竜の唄 潜入捜査官~』というのがありました。相手のテリトリーにひたすら「もぐる」捜査官の物語
です。
動詞「もぐる」に、~する人の英語の接尾辞「er」をつけて、もぐる人=「もぐら」に転じさせ漢字書きする。和英チャンポンの筋はきちんと通っています。であれば、潜入捜査官が新登場のかっこいいもぐら(土竜)なのかも知れません。

もうひとつ、昨今、無形の文化財として注目度高まる素潜り漁。乱獲防止のためアクアラングも着けず命の危険を冒してまで海底の岩場へと潜っていく。岩に張り付くアワビを、そっと(波立てると岩に一層固着し剥がせなくなるのだ)貝殻を金具で起こし、そうして手でつかみ取ってくるー。素潜り漁は言ってみれば、取られる側と取る側の目線の高さが同じな、古代に発する原初的な漁の手法なのです。

「漁業」と呼ばず、「漁り(すなどり)」と呼びたい由縁です。能登舳倉島の海女さんたちの、「漁り」の発展継承を願いつつーーー、それにしても蔵元さん、さそりといい、もぐらといい、どっきりネーミングが好みのようで。
きょうは、これにて。次回、シリーズ13で。