すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">どうにも熱い、 焼酎ネーミング シリーズ8</span>

どうにも熱い、焼酎ネーミング シリーズ8

世間には、魔女もいれば天使もいるそうです。シリーズ4では、魔女は魔女でも美魔女を取り上げたので、今回は天使と恋の味をキーワードに、焼酎のラベルの世界に暫し、連想に継ぐ連想で遊んでみたい、と。




「いつまた会えますか」に恋の味
米ポップスの歌詞、すでに正解
◆この地に天使が舞い降りた。 天使のささやき 恋あじ

(宮崎・神楽酒造、麦)

「この地に天使が舞い降りた。 天使のささやき 恋あじ」とは長いな。肩見出しには句点(。)まで付いていて、これはもう事前説明の文章ですな。北陸限定だから、この地とはもちろん北陸のこと。

1度でいいから聞いてみたいですな、「恋あじ」のする「天使のささやき」を。

まさか、カルピスに

似ていないでしょうね。乳酸菌飲料のあちらは十代の初恋の味。こちらは焼酎だから大人の恋のはず。それも、かなりビターテイストな…。

昔のアメリカンポップスに女性トリオの歌う「天使のささやき」という歌がありました。
ネットで検索してみたら、スリーディグリーズの邦訳歌詞全文がぞろぞろ出てきました。サビは、何度も繰り返される、

いつ、また、あなたに会えますか?
いつ、また、あなたに会えますか?

 というフレーズです。

なるほど、会えますか、と耳元に届くさやかな願いの声に勝る至福なささやきは、ないかも知れません、人間誰しもにとって。そう、天使のささやきとは、詰まるところ、会えますか、の一言なんですな。自分に会いたいという人がいてくれる幸せ。これだったんですな。齢を重ねてきて、ようやく、合点、納得、承知etc…の心境です。

ーーところでお尋ねします。ささやきは、どんな福音を伴ってくるのでしょう?。

何と、ささやきだけでは足りぬと申すか? では、これを進ぜよう。「天使のわけまえ」だ。これを、あなたにも、こなたにも、そなたにも。そしてどなたにも。
ーーハイ、確かに、隣の棚に同じ蔵元の名で、「天使のわけまえ」が何本か準備されてありました。でも、また焼酎ですか????
……(無言)
……

ーーーはい、天使様!!

 



生まれてきた甲斐がありました
命名の主、相当の人生の達人
◆両思ひ◆
(鹿児島・白露酒造、芋)

「両思ひ」。人生生まれてきた甲斐がありました。希望が、展望が、視野が明かりとともにパッと開けてきました。神々しい光、ありがとう神様…。
誰しも、一度はこう言ってみたいものですな。

だけど、蔵の運、店の運をかけたにも等しい商品に名前を与えるに当たって、このような「両思ひ」という名前が、何のてらいもなくすらり
と出てきた(大変、失礼!)のだとしたら…。蔵元は、いったい何度、「反対語」の世界を経験されたのでしょうか。

片思いのことです。いや、もっと端的に、失恋のことです。恋心すべて両思いか得恋だった人、もしくは、ほとんどすべて片思いか
失恋だった人、両極端いずれかの人でしょうな、この名付け親は。

普通の、
中途半端な人なら、こっぱずかしくて、とても両思いなんて言葉は出てきません。出てくるはずがありません。人生そんなものです。片頭痛のついでに片恋慕が出てくるのです…。

されど、失恋、片思いがあればこそ、人生のさまざまな

課題は、歩みがのろくても成就、成功に近づき、どうにか達成される。そうして、総じて人間社会の質は向上されてきたし、今後も向上していくのでしょう。
片思いがあればこそ、文芸は艶を増し、絵ごころ、詩ごころは美術、芸術へと昇華し、手業技能は新たなスキルを獲得する
。というようなことを、人生経験豊富な先賢はおっしゃっています。リビドーというフロイト心理学の言葉もありましたっけ。
 
考えれば考えるほど、人が人を好ましく思い、人が人に寄せる慕情の偉大なこと。であればこそ、人類は悠久の歴史を刻んできたのでしょう。
ただし、時には決意をもって「秘すれば花」もお忘れなく。

丹精したわが蔵の焼酎に、「両思ひ」という名前を与えた人、相当の人生の達人ですな。きっと。

 きょうは、これにて。次回シリーズ9で。