すーてき散人空の紙

北陸発、テキスト偏重、テーマは原則その時々、気分次第の旬刊ないし月刊、あるいはときどき不定期刊のブログです。

<span itemprop="headline">どうにも熱い、焼酎ネーミング シリーズ3</span>

 連想が連想を呼ぶ焼酎の名前シリーズ第3弾。
奇想天外な名前の中には、ちょっと哲学的な匂いが漂い、その真意を考えさせてくれるものもある。今回は、
百年の孤独◆問わず語らず名も無き焼酎◆について。
(シリーズ2は、銀座のすずめ、とんぼの昼寝)
(シリーズ1では、六地蔵の夜仕事、我伝直伝)



加速する人生の体感速度
百年の恋ならまだしも
百年の孤独

(宮崎・黒木本店、麦)

仮に150歳まで生き延びたとしても、100年にもわたる孤独なんて、とても耐えられない。凡人はもちろん、孤高の人と称揚される気高き人でも、限度がありましょう。

しかし、百年の恋ーそうそう、小説のタイトルだったか、雑誌の見出しだったかにありましたーなら、あり得るかもしれません。

老いてなお、あるいは先に逝っているかもしれない人を、それでも同じ星空の下にいるはず、と満天の星を仰ぐ…。百年の孤独はあり得なくても、百年の、数十年の恋なら、ちらほらあるのでは?

百年―。長いようで案外短い。信長が好んだ幸若舞の一節は「人間(じんかん)50年、下天のうちを比ぶれば夢幻(ゆめまぼろし)のごとくなり」。その人間五十年を過ぎると、年月はさらにアクセルを踏み込んで、過ぎていく。年齢に比例するんですな、人生の体感速度は。

ひとりぼっちより、2人の世界です。百年の孤独なんて寂しいことは言わず、せめて百年の恋を夢想しながら、孤独な長期熟成を経てきた焼酎を、人生の来し方を肴にしみじみ飲みましょう。しみじみと。脇には、若山牧水の歌集が似合うかもしれません。


自己発信・PR無くて売れるの?
サクランボ知事とは対極
◆問わず語
らず名も無き焼酎◆
  (鹿児島・大山甚七商店、芋)


私の方からは、問いかけも、語りかけもしません。名も無き輩、衆生の一人ですから。どうか、かまわないでください。
独り黙然として些細なことを思い、ときに目の前のことに集中したいのです。気になさ

らず、どーぞ、放って置いてくださいーー。

 控えめ。謙遜、謙譲の美徳あふれるネーミングです。まるで、修行際限なしの仏法僧のような、凜とした風情が感じられます。その実、しっかり芯はありますよ、と言いたげな。

しかし、問わず語らずと言われれば、問うてみたい、語りかけてみたいのが人の常。日
用品もお酒もネットのワンクリックで購えるIT時代に、自己発信・PRなくして大丈夫、売れるのでしょうか?と。特産サクランボのかぶり物を頭に載せてまで、山形県の魅力発信へ「自分の殻を破って」と、幹部職員一同に訓示した女性知事もあったのに。ホント、対極。ホント、問わず語らずでよろしいのでしょうか。

子供のころ学校のクラスにもいたでしょう。あまりしゃべらず、はしゃがず、それでいて名指しされれば、きちんと自分の意見、感想を言ってのける同級生。蔵元創業の大山甚七さんもきっとそんな幼時を送った焼酎の作り手、職人だったと想像します。

人のあり方を諭すような、ありようを戒めるような、問わず語らずの名も無き人。焼酎にも、一本芯が通ってます。

きょうは、これにて。次回シリー
ズ4で。